2018 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児期の象徴化を生みだす分離と言葉に関する臨床心理学的研究
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16K01867
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
黒川 嘉子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (40346094)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2021-03-31
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Keywords | 乳幼児のことば / 移行対象 / 象徴化 / 乳幼児心理臨床 / プレイセラピー / 情緒応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、言葉を話し、自身を物語り、他者とコミュニケーションをとるようになる過渡期にあらわれる乳幼児期特有のことばをとらえ、(1)分離のプロセスと言葉、(2)身体感覚をともなう言葉、(3)遊ぶことと話すこと、の3つの研究項目について検討している。 30年度は、29年度から引き続き、乳幼児の養育者を対象に質問紙調査を実施した。その結果を、「乳幼児の言葉にみる音感性の移行対象―移行対象としての言葉をとらえる試み①」(日本心理臨床学会第37回大会,2018)として研究発表をおこなった。“不思議な言葉”というキーワードで、約半数の養育者から回答を得ることができ、濁音や破裂音、呪文のような言葉など、不思議な響きや意味の分からない言葉を心にとめる養育者の感受性と、子ども自身が独自の「ことば」を創り出し、自分のもの(所有の感覚)として愛着をもって使っていることがとらえられた。 さらに、質問紙調査実施後に、協力の得られた対象者にインタビュー調査をおこなったところ、養育者も身体感覚をともなう歌や踊りが、乳幼児期特有の言葉や感情体験に重要な要素ではないかと感じていること、子どもと養育者のあいだだけで通じる言葉を楽しみながら使っていることなど、環境側の要因についても検討点が見いだされた。また、分離にまつわるテーマとして、離乳のプロセスを検討したところ、F.Dolto(1984/1994)が述べているように、母親と子どもとの身体的距離と情緒的距離のあいだで、言葉がどのように象徴的機能を果たしていくのかという重要な局面であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究が、追加採択を受け、初年度後半から開始したため、研究協力機関との調整等により全体的にやや遅れて進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
①基礎的データ収集のため、質問紙調査およびインタビュー調査の実施。 ②言語的・非言語的コミュニケーションの様相を身体感覚の次元からとらえるために、母子相互作用の観察研究および母親の情緒応答性調査をおこなう。 ③言葉の発達に問題をもつ子どもや自閉症スペクトラムの子どもについてもデータを収集し、他者と共有する言葉と魔術的な言葉や移行対象と自閉対象の比較研究をおこなう。
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Causes of Carryover |
初年度後期からの研究開始により、初年度の経費執行が当初予定より大幅に少なく、その分を翌年度以降に繰り越し、研究進捗状況に合わせて執行している。
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