2017 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム人介護士帰国者の就労システム構築に関する研究:EPA・技能実習を中心に
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16K01994
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Research Institution | Seijoh University |
Principal Investigator |
比留間 洋一 星城大学, リハビリテーション学部, 准教授 (30388219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 ゆかり 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 講師 (60469484)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国人介護士 / アジアの高齢化 / ベトナムの高齢者福祉 / 国際労働移動 / 技能移転 / 経済連携協定(EPA) / 技能実習制度 / 介護留学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の経済連携協定(EPA)・技能実習制度・留学生制度によって急増するベトナム人介護士の課題(帰国後の介護の仕事の不在)と、ベトナムの急速な高齢化の課題(農村中間層の高齢者福祉の不在)を、日本での介護経験を活かした「帰国後の就労モデル事業の開発」を通じて同時に解決を図るための調査研究である。 研究成果の発信に関して、老施協全国大会での口頭発表は達成した。また、本研究プロジェクトの当事者メンバーであるEPAベトナム人介護士1期生4名からのインタビュー内容をまとめて、短い論文を公表した。この4名は国家試験(第30回介護福祉士)に合格し、うち2名がベトナムに帰国する。帰国者の1名はベトナムの人材育成・送出し会社で「介護・日本語教員」として就職する。彼女をはじめ、EPAベトナム介護士の帰国者で「介護・日本語教員」として就労するケースが増えてきたので、今後、帰国者の就労調査を本格的に実施する。本研究プロジェクトの当事者メンバーである留学生1名も国家試験に合格し、日本の介護施設に就職した。当該留学生のベトナムの地元(中部の農村コミュニティ)は農村中間層の高齢者福祉の不在という状況が顕著である。「帰国介護人材を活用したベトナムの高齢化対策」のケーススタディとして今後、当該留学生の出身コミュニティをフィールドとした本格的な調査研究を進めていく。また研究代表者は、ハノイ市での「介護会社設立」プロジェクト(介護技能実習制度を活用する計画)に参画しており、今後、中核都市でのケーススタディとして遂行していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
介護技能実習制度は予測よりも大幅に遅れて、2017年11月になって施行された。さらに、他国に先んじてまずはベトナムから3年間で3万人を受入れるとの情報もあったが、結局のところ現時点でもなかなか受け入れが進んでいない。そのため、当初計画していた技能実習生の帰国者調査は実施できない見通しである(帰国者が現われるのは基本的に現時点から3年以上先になる)。 一方、外国人介護留学生の受け入れは急増している(平成17年度入学者591人中、ベトナム人が最多で364人)。その中にはベトナムで看護を学んだ人材(看護人材)が相当数含まれる。看護人材の日本への流出(定住化した場合)および還流(帰国した場合)が、ベトナムの高齢者福祉にどのような影響を与えるかについて把握するためには、ケーススタディに加えて、流出・還流の量的データが必要である。そこで、ベトナム看護協会会長、日本介護福祉士養成施設協会理事らとともに「ベトナム看護人材の日本への流出・循環のあり方に関する研究会」を立ち上げ(2018年3月)、今後調査研究を遂行することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
就労支援ガイドブック作成のために、次の3つの調査研究を実施する。 第一に、ベトナムにおいてEPAベトナム介護士帰国者のインタビューを実施する。推進方策として、本研究プロジェクトの当事者メンバーである帰国者2名の協力を得て、雪だるま式にインタビュー協力者を得ていく。 第二に、当事者メンバーの実家の所在する農村コミュニティおよびハノイ市での高齢者福祉(介護)事業を事例としたケーススタディ(介護ニーズ等の実態に関する基礎調査)を遂行する。 第三に、前述した「ベトナム看護人材の日本への流出・循環のあり方に関する研究会」の活動として、量的データを収集・分析し、就労支援のための学術的政策的インプリケーションを得る。 上記の研究成果を、日本介護福祉学会、日本介護福祉教育学会、ベトナム看護協会『看護雑誌』での口頭発表や論文掲載として社会・国民に発信する。
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Causes of Carryover |
研究プロジェクトの当事者メンバーであるEPA介護福祉士候補者や介護留学生と隔月で研究会を行う計画であったが、EPA介護福祉士候補者も介護留学生も今年度は年末(2017年)に介護福祉士国家試験を控え、休日は試験勉強に費やす必要が生じたため、メール等SNSでの意見交換へと変更した。そのため、当初計上していた国内旅費を使用しなかった。国家試験は終了したため、次年度は研究会を計画通り開催する。 また、次年度はEPA介護士帰国者調査および帰国者や元留学生(現在は日本の介護施設に就職)の出身コミュニティの介護ニーズ等に関する基礎調査を、ベトナムで実施する。
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Research Products
(6 results)