2018 Fiscal Year Research-status Report
福建省の経済発展戦略における対台工作の位置づけと地方幹部の役割
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16K01997
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
下野 寿子 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (40294607)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福建省 / 台湾 / 対台工作 / 両岸農業協力 / 台湾農民創業園 / しょう州(Zhangzhou)市 / しょう浦(Zhangpu)県 |
Outline of Annual Research Achievements |
福建省社会では農業や農村部の存在感が比較的大きいこと、また農村部では草の根レベルで台湾へ移民した人々およびその子孫との紐帯を維持してきたことに鑑みて、農業政策や農村地域での対台工作について文献調査を行い、結果の一部をまとめた。但し、漁業については漁村地域の対台湾観を調べるにとどめ、議論の中心は農業と農村とした。 農村部の対台工作の中心は、台湾農民や台湾農業企業の誘致、台湾農民創業園など対台工作の制度の構築と運営、対台工作と地域の農業発展との関連づけである。2018年度に文献調査を行った福建省南部のZhangzhouとZhangpuは、台湾農民創業園が集積している地域であり、創業園設立以前の農業交流も踏まえて時系列的な流れと協力状況を調べた。中国の政治制度ならびに対台湾関係の性質から考えて、台湾農民・台湾企業の進出が実現したこと自体に「官」(中央政府や地方政府)の関与が窺える。一方で、これらの地域は戦前までの台湾移民を多く輩出した地域であることから、民間レベルに本来存在したネットワークが機能した可能性があり、管轄する末端の地方政府は民間のネットワークをどこまで許容し、どのように政策に活用するかという課題に向き合うことになる。このような問題について先行研究や地誌を中心に検討した。 また、台湾農民創業園に台湾人が進出するまでの経緯を確認し、「官」の関与を確認するように努めた。これについては福建省よりも山西省の台湾農民創業園について詳細情報が得られたため、福建省の状況を検討する際の参考とした。 これらの成果は、日本現代中国学会全国大会での発表ならびに拙稿で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗が当初計画より遅れたと判断した根拠は、2018年度末までに本研究の総括と成果公表を行なう予定であったが、一時的な健康上の問題など諸事情により間に合わなかったためである。しかしながら、当初の研究計画の必要な修正は適宜行ってきたこと、第1、2年目の成果を反映させながら第3年目の研究を着実に遂行してきたこと、研究総括の概略についても検証を重ねてきたことから、2019年度中に成果取りまとめが可能であると判断している。このような状況を総合的にみて、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで入手した資料を整理し、若干の資料の捕捉とデータの更新・再確認などの作業を経て、成果の取りまとめと公表を行なう。原則として文献調査を中心とするが、必要に応じて現地調査を行う可能性がある。 取りまとめに際しては、①対台工作における地方幹部の役割について可能限り詳細に記録すること、②省長や省委書記など福建省内の高官については、歴代幹部の就任状況と主要政策、台湾との関わりについて図表などを用いてわかりやすく整理すること、③都市部での対台工作と経済開発との関連性についての議論に加えて、対台工作の射程に農業分野を含めたことによる議論の加筆修正、④文化人類学の視点と研究手法への接近を試みたことによる効用の指摘などに留意しながら行う。
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Causes of Carryover |
研究計画の若干の遅れが原因である。今年度が最終年度になったため、文献複写等に充てる。
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Research Products
(2 results)