2016 Fiscal Year Research-status Report
1950年代から70年代のニューヨーク文化における仏教思想の影響
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16K01999
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大和田 俊之 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (20365539)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハリー・スミス / ジャズ / ニューヨーク / サイケデリック |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はニューヨークのアート・シーンへの仏教思想の浸透を調査するために、1952年にAnthology of American Folk Musicというコンピレーション・アルバムを発表した前衛芸術家ハリー・スミスについてリサーチを進め、5月にはカナダのカルガリー大学で開催されたアメリカ・カナダ合同ポピュラー音楽学会で "Anthropology and the Avant-garde: Anthology of American Folk Music Reconsidered" という口頭発表を行った。 また、アメリカのアート・シーンに仏教思想を広めた鈴木大拙が講座を開いていたコロンビア大学音楽学部のKevin Fellezs教授と研究交流を進め、7月には大阪大学で開催された"The Changing Same in Transcultural Musicking" という日米文化交流に関するシンポジウムで輪島裕介氏(大阪大学)、高橋聡太氏(福岡女学院大学)とともに登壇した。12月には日本ポピュラー音楽学会にてワークショップ「初期電気録音時代の世界音楽地政学 : Michael Denning, Noise Uprisingの批判的読解を通じて」に参加し、ポピュラー音楽産業の発展における日米の特質について発表した。 論文ほどの長さではないものの、アメリカ文化における禅思想の影響を考察する文章としては、「映画とジャズの1959年──「アメリカの影」とモード・ジャズという革命」という文章を『キネマ旬報』(2016年12月号)に、サイケデリック文化における仏教思想の影響についても「ジョージ・クリントン・インタヴュー アフロ=サイケデリア──Pファンクと人種混淆」という文章を『ミュージック・マガジン』(2017年2月号)に執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に訪問する予定だったニューヨークの仏教関係の施設(American Buddhist Study CenterとZen Studies Society)、およびニューヨーク近代美術館(MoMa)、さらにラトガーズ大学のInstitute of Jazz Studiesやコロンビア大学のThe Center for Jazz Studiesでのリサーチはまだ行っていない。これは、フルクサス関係の資料を有するニューヨーク近代美術館との連絡がうまくいかなかったため、二年目にまとめて訪問することにしたためである。その代わりに、当初の予定では二年目に行う予定であったハリー・スミス関係の研究・調査を進め、国際学会で発表することができた。ハリー・スミスと前衛映画のかかわり、またその過程における仏教思想の影響などについて発表し、アメリカ本国の研究者から貴重なコメントを得ることができた。ニューヨークでの資料収集に若干の遅れが生じているため、二年目に挽回したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目となる平成29年度は6月上旬にアメリカ学会でヒップホップ・カルチャーに関するパネルに登壇し、現行シーンにおける日本文化の影響について論じる。また、6月下旬には国際学会での発表が決まっており、ドイツで開催される国際ポピュラー音楽学会にてアメリカの黒人音楽にみられるジャポニズムについて発表する予定である。また、まだ正式に決定していないものの、10月にアメリカのコロラド州で開催されるアメリカ民族音楽学会での発表希望も出している。夏にはニューヨークを訪れ、一年目に行う予定だった現地での資料収集を進めたい。その際、前衛映画の保存を目的としたAnthology Film Archivesも訪問し、インディペント映画のシーンにおいて日本の思想がどのように影響を及ぼしたのかについて調査を進めたい。
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Causes of Carryover |
当初の予定だったニューヨークへの調査旅行が実現しなかったために、旅費として計上した予算が余っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は国際学会への参加も決まっており、資料収集のためにニューヨークも訪問するので、初年度の分も含めて旅費がかかる予定である。
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