2016 Fiscal Year Research-status Report
現代パレスチナ文化の観点による平和構築論の再検討 パフォーミング・アートを中心に
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16K02001
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
田浪 亜央江 成蹊大学, その他部局等, 研究員 (70725184)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化を通じた平和構築 / パレスチナのパフォーミングアート / 集団的アイデンティティ / 文化財保護 / ダブケ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は研究全体の予備的な作業に集中することとし、これまでの研究で関係を構築してきたヨルダン川西岸地区でフィールドワークを行なう予定であった。計画通り8月1日から13日にかけて当該地域で調査を行い、エルサレム、ジェニーン、タバリヤ、ベツレヘムの文化関係NGOの訪問、関係者インタビューを行った。 とりわけ報告者が数年にわたって参与観察を続けている団体「エル=フヌーン」が主催する、本年で17回目となるパレスチナ・フェスティバル(7月25日~8月5日)に後半から参加し、ジェニーンでの企画実施に関してスタッフサイドからの参与観察を行ったことは有益だった。ジェニーン全体で100名のボランティアが集められ、地域に根づいた企画であることを確認しつつ、ダブケという表現手段がパレスチナ人の文化表現活動において特別な地位にあることを確認した。 また、ベツレヘムでは自治政府(PA)文化省、観光省のバックアップのもとにナジュマ通りで行われた「ベツレヘム・ライブ・フェスティバル」の参与観察を行ない、関係NGOスタッフへのインタビューを行った。UNESCOの世界文化遺産に登録され、PAのイニシアティブのもと街区の修復・整備事業が盛んな一方で、地域の文化的アイデンティティが住民を置き去りにして変容してゆくことへの懸念の声が存在し、保存すべき「文化」の内実に関する多様な議論がもたれていることを伺い知ることが出来た。 分離壁に囲まれ占領の実態が可視的である一方で、世界文化遺産化によって「平和」への希求のアイコンともなっているベツレヘムの町では、占領を前にした文化の無力さとともに、文化遺産保護のような文化政策・観光行政における「文化を通じた平和構築」言説が溢れている。代表的なNGOへの訪問とインタビューを通じ、この町での継続的な調査が有望であるという手応えを得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究自体は順調に行なうことができた。情勢の不安定さから現地調査の実施に懸念があったものの当初の計画通りにパレスチナ西岸地区での調査を行った。そしてとりわけ分離壁に象徴される占領による抑圧と自治政府による観光行政によって二重の意味で急速な変化を見せるベツレヘムにおける今後の調査の足がかりを得たことは大きな成果である。 計画では平成29年1月から2月のあいだに初回の中間報告を行う場を設ける予定であったが、これについては本年度は行なわないことにした。報告者が所属研究機関を移籍する時期と重なり、実施する余裕がなかったという事情もあるが、むしろ初年度はあくまで予備的な調査であったことを鑑みて、この時期に急いで中間報告を行っても不十分なものにとどまると判断したためである。 他方、フィールドワーク中の幸運も重なり、当初の予想以上に充実した資料を揃えることが出来た。こうした成果を踏まえて2年目に一層有意義な調査を行える見通しを持つことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も当初の予定に従って、パレスチナ西岸地区での調査を継続する予定であり、初年度の結果をふまえベツレヘムを中心に調査を行うこととしたい。前回は町をあげてのフェスティバルの期間中という事情もあり、日常的なパフォーミングアート活動についての調査を行なうことが出来なかったため、訪問時期を変えてこの町内外の代表的な劇団やダブケグループを訪問し、インタビューを行う。そして当初の計画に従い、PAによる文化政策、国際援助団体、地元NGOという異なるアクターの見解を明らかにし、当事者ごとの「文化による平和構築」概念の解釈の食い違いや利用の仕方を浮き彫りにすることを目指す。 他方、研究の中間報告の形態については軌道修正を行なうこととしたい。報告者の所属研究機関の移籍から日の浅いなか、不慣れな環境の中で研究会の準備にエネルギーを割くよりは、投稿論文や学会報告を優先させるほうが効率的であるように思われる。それに向けたデータの整理を早急に行いたい。
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Causes of Carryover |
研究計画上では2回(2名)の現地調査としていたが、スケジュール上調整が難しく、また一回の調査である程度目的を達成できる見通しを得たため、旅費の経費は一回分で済んだ。一方、当初の見通しより多くの関連資料が見つかったため、物品費は当初計画よりも膨らんだ。両者の差額として次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は2回(2名)の現地調査の実施を見込んでいるため、前年度の残額を組み込んでも次年度使用額が発生する余地はないと思われる。
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Research Products
(2 results)