2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02010
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
今泉 裕美子 法政大学, 国際文化学部, 教授 (30266275)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 南洋群島 / ミクロネシア / 引揚げ / 南洋群島帰還者会 / 南興会 / 慰霊と交流 / チャモロとカロリニアン |
Outline of Annual Research Achievements |
〈1〉本土の帰還者組織の機関紙分析・南洋群島共助義会・南洋群島協会…機関紙の目次作りと内容分析、帰還者組織の全体的把握に努めた。ただし1990年代から2000年代については、〈4〉の進捗状況とも関わるが、機関紙に情報が十分ではなく、関連史・資料の新たな収集の必要性が明確になり、その見通しをつけた。・その他本土の帰還者組織…沖縄の帰還者組織に関して後述のように予想外の事態が生じたためそちらの取材を優先し、計画していた東北の組織の調査は、資料と情報整理に留めた。・沖縄の帰還者組織…帰還者会の一部の関係者が所蔵する史・資料閲覧が漸く可能となり、その調査と聴き取りを実施した。〈2〉現在も活動を続ける帰還者組織の調査…沖縄の南洋群島帰還者会及びパラオ友の会の現地慰霊と交流の旅に同行取材し、沖縄で最も活発に活動しているサイパン会、テニアン会、ポナペ友の会の活動を取材した。沖縄の諸帰還者組織には、2019年を以て主な活動を終了したいとの意向を示したものがあり(南洋群島帰還者会は現地慰霊と交流の旅を2019年の50回目を以て最後とする)、これらの動きを取材した。東京の南興会に参加し、関係者からも取材した。〈3〉ミクロネシア住民の対応、帰還者組織との関係…計画していた1990年代から2000年代については、現地の情報が必ずしも十分には整理されていないこと、また後述の台風被害のためにアクセスが困難となったため、引き続き協力を得ることになった。本課題を発展させるための共同研究の準備を行った。〈4〉公文書の調査…〈1〉〈2〉に計画外の時間を要したため、収集済の史・資料を主に整理、分析することにし、新たな公文書については情報収集と収集の見通しをつけた。〈5〉専門家との研究交流…日本の植民地研究者と組織する「戦争と移民研究会」にて報告を行った。ミクロネシアの研究者と情報交換、今後の研究計画を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本課題で設定した研究計画に厳密に照らして評価すれば「遅れている」が、その主な要因は後述のように予期せざる調査の必要が生じたためであり、計画外のことであっても本課題に関連する研究は着実に進めることが出来た。 ①今年度も、2016年度以来の遅れを挽回しながら、【研究実績の概要】に記したように、本研究の特徴となる南洋群島からの帰還者及び関係者を直接の対象とする調査を進めたが、当初の計画通りには進めることが出来なかった。具体的に記せば、沖縄の南洋群島帰還者関連の諸組織のなかで、本年度中に活動の停止や一部活動の停止を具体的な日程に上げたり、公表しないものの、活動の縮小に関する情報を研究代表者にご提供下さった組織もあったことから、こうした動きへの取材を行ったことが計画外の調査となった。また、組織的な活動の停止、縮小を決定あるいは予定したことを契機に、組織の歴史を記録したいとして、計画以外の史・資料の閲覧や提供、聴き取りが可能となった場合もあった。②前年度同様、予定していた調査が、帰還者の体調不良や逝去から延期・中止となったり、緊急に調査を実施したりすることも度々あった。 以上、当初の研究計画とは異なる調査が生じたが、本研究課題にとって重要な調査であり、計画の修正には柔軟に対応しながら、現在優先すべき調査を行い得たとともに、今後の計画を立てるうえで重要な情報を収集しえた。 ③ミクロネシア、特に日本の南洋群島帰還者と長く、比較的大規模な交流を維持してきた北マリアナ諸島では、2018年10月に巨大台風の直撃を受け、甚大な被害を被り、インフラ復興が2019年に入っても十分に進んでいない。よって計画していた現地調査が実施できなかったり、地元研究者と連絡をとることすら難しくなったことで、現地研究者との共同研究を大幅に遅らせざるをえなくなったが、研究継続のための協力態勢は確認し、可能な範囲で情報交換を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はないものの、当初の計画では本研究課題の最終年度にあたる2019年度は、補足調査のみで研究の取りまとめを行う予定であったものを、次のような帰還者組織の動きを積極的に取材するように一部修正する。つまり、【現在までの進捗状況】に記したように、沖縄の南洋群島帰還者会の主要な活動の一つである、現地慰霊と交流の旅を2019年を以て最後とするという決定があり、こうした動きと連動するかのように、沖縄の旧南洋群島帰還者による様ざまな組織の中には、活動を縮小あるいは停止する可能性を言及し始めるものも現れた。またより若い世代のなかに、組織的な活動を継承、再編しようとする動きも現れている。こうした動きは、当初の研究計画では予期できなかったことであるため、2019年度は組織関係者からの情報収集や活動の終焉、再編について記録化に努める。さらに、本土の南洋群島帰還者組織の多くは活動を終了もしくは停止しているが、本土の関係者には、この1年の沖縄の帰還者組織の動きに応じて沖縄の活動に参加したり、研究代表者に本土の組織に関する情報を積極的に提供し、記録化を望む動きがあった。これらの動きは本課題の重要な研究機会であるため、積極的に対応する。 一方、ミクロネシア、特に北マリアナ諸島での研究計画は、【現在までの進捗状況】に記した理由のため、現地研究者に無理がないよう対応する。 以上から、今年度は現時点しかできない帰還者組織の終焉、再編に関する調査を最優先しながら、本課題のとりまとめと、本研究課題への取り組みを通じて明らかになった次の課題について研究計画を作成したい。
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