2016 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視点による翻訳文体と翻訳規範に関する実証的研究
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16K02043
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
古川 弘子 東北学院大学, 文学部, 准教授 (70634939)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 翻訳学 / 翻訳研究 / 規範 / ジェンダー・イデオロギー / 女ことば / 文末詞 / 児童文学 / 文芸翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は10か月ぐらいまでは翻訳テクストと非翻訳テクスト(日本語で書かれたテクスト)の文末詞使用の分析を児童文学の女性登場人物に焦点を当てて行い、その後は現代小説の女性登場人物に焦点を当てて行った。 児童文学の比較研究では、『ハリー・ポッターシリーズ』(全11巻)、『ナルニア国ものがたり』(全7巻)、『魔女の宅急便』(全6巻)など計30冊程度を定性分析したのち、『ハリー・ポッターシリーズ』と『魔女の宅急便』の女性主人公の会話文に使用される文末詞を定量分析した。これらの研究成果は、国内外の学会で発表された。その後論文を執筆し、ジャーナルへの採録が決定した。 現代小説の比較研究では、翻訳テクストと非翻訳テクスト合わせて約25冊の定性分析を行い、そのうち数冊を選んで定性分析を行った。現代小説については、平成30年度も研究を続けていく予定である。 また、当該年度に出版した書籍Translating Women(Routledge、共著)の編者Prof. Luise von Flotow(カナダ、オタワ大学)とハワイ大学で行われた学会でフェミニスト翻訳についてのパネルを組み、日本の事情についての発表を行った。 さらに、当該年度中にPalgrave Macmillanと書籍Palgrave Handbook of Literary Translationの出版契約を結ぶことができた。これは翻訳学の第一線で活躍する世界中の研究者25名による文芸翻訳の事例研究を集めたもので、世界初の試みである(Prof. Jean Boase-Beier、Dr. Lina Fisherと共編)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
児童文学の女性主人公の文末詞使用を定性・定量分析した結果については、日本通訳翻訳学会第17回会年次大会、PALA Annual Conferenceにて口頭発表された。これらの研究結果をまとめた論文は、ジャーナルへ採録されることが決定した(2017年度発行予定)。現代小説の分析は平成30年度への継続課題であり、今後国内外の学会で発表するために研究を続けている。 また、2016年10月に刊行した書籍(共著)Translating Women: Different Voices and New Horizonsの編者Prof. Luise von Flotow(カナダ、オタワ大学)と本書のテーマに合わせたパネルを組み、学会Fifth Asia-Pacific Forum on Translation and Intercultural Studiesで発表した。この本は西洋以外の視点からジェンダーと翻訳について行った研究をまとめた世界初の試みであり、国際学会で世界中からの参加者に発信できたことは意義がある。 さらに、Palgrave Macmillan (London & New York) と文芸翻訳の事例研究についてのハンドブックPalgrave Handbook of Literary Translationの出版契約を交わすことができた(共編者: J. Boase-Beier & L. Fisher)。これは翻訳学の中でも文芸翻訳研究に特化した世界初のハンドブックで、欧州や北米のみならずトルコ、中国、オーストラリア、ニュージーランドなど第一線で活躍する世界中の研究者25名が一章ずつ執筆する大きなプロジェクトである。現在、平成31年度年の刊行に向けて編集作業を行うとともに、日本語への翻訳における文体と規範についてまとめた自らの論文(第6章に掲載予定)を執筆している。 加えて、東北学院大学文学部英文学科主催の公開講義にて、高校生や一般の人向けに翻訳学の歴史や理論とその主要な研究のうちいくつかを紹介し、翻訳学の普及に努めた。この公開講義内容はその後、論文「翻訳学への招待」にまとめて『東北学院大学論集―英語英文学―』で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はまず現代小説の女性登場人物に焦点を当てて、翻訳テクストと非翻訳テクストの文体比較を進める。現代小説の中でも、若い女性をターゲットにした小説の登場人物の会話文に使用される文末詞を定量分析する予定である。その後は、現代小説の文体研究で得られた結果を国内外の学会で発表をするとともに、論文を執筆し、ジャーナルで発表するのが目標である。また、平成28年度から続けているPalgrave Handbook of Literary Translationの編集も最終段階に入るため、そちらにも注力していく。
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Causes of Carryover |
旅費が予定よりも安く済んだため、平成28年度の支出額は当初予定よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成30年度に予定している国際学会への参加費用や国内での資料収集の費用に充てたい。
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Research Products
(5 results)