2018 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視点による翻訳文体と翻訳規範に関する実証的研究
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16K02043
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
古川 弘子 東北学院大学, 文学部, 准教授 (70634939)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 翻訳学 / 翻訳研究 / 規範 / ジェンダー・イデオロギー / 女ことば / 文末詞 / 文学翻訳 / トランスレーション・スタディーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には、前年度に行ったインタビュー取材のデータを規範意識と翻訳テクストにおける文体に焦点を当てて分析し、論文執筆を行った。このインタビューは、英語で書かれた短編小説Folie a Deux(Rebecca Brown著、1993)を訳した2名の翻訳者がどのような規範意識を持っていたのか、その規範意識はどこからきているのか、その規範意識が翻訳テクストの文体にどのように現れているのか、2つの翻訳テクストの文体の特徴はどのようなものなのか、などについて、女性の登場人物の言葉づかいの観点から探ろうとしたものである。その成果は、7月25日~28日にイギリスのバーミンガム大学で行われた国際学会で口頭発表された。同学会ではコーパスを使った文体分析に関する発表が多く、今後の分析に必要な知見を得ることもできた。 また、共編著Palgrave Handbook of Literary Translationの編集作業も行い、2018年夏にPalgrave Macmillanから出版された。このハンドブックは、文学翻訳研究の中でも事例研究に焦点を絞った新しい切り口で編集されたもので、執筆者26名にはこの本のために新たに論文を書いてもらった。編集のほか、単著論文De-feminized Woman in Conan Doyle’s The Yellow Face(第6章、107~123ページ)と、共著論文Introduction(第1章、1~18ページ。文学研究における事例研究を理論的枠組みを使って説明した)とConclusion(第27章、535~541ページ)の執筆も担当した。 2018年夏以降は、2019年度に行う予定の受容研究についての文献研究、学会等への参加による情報収集、また分析対象候補のテクスト収集に充てられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に示したように、文芸翻訳者と編集者へのインタビューのデータを分析し、その結果を国際学会で口頭発表することができた。さらに、文体研究の主流となりつつあるコーパス分析を使用した様々な研究発表を聞き、ほかの研究者と情報交換をすることで、今後の研究に必要な知見や情報を得ることができた。また国内の様々な学会やシンポジウム、勉強会への参加を通して、研究手法などについての新たな知見を得られたことは収穫であった。 加えて、文学翻訳における諸問題を事例研究を通して考えようとするPalgrave Handbook of Literary Translationを刊行できたことも大きな成果であった。この本の主な特徴は4つある。(1)文学翻訳に関する初のハンドブックであること、(2)文学翻訳研究で広く使われているにも関わらず理論的枠組みが提示されることがほとんどなかった事例研究に焦点を当てたこと、(3)文学翻訳研究の中心であるヨーロッパや北米のみならず、アフリカ、アジア、中南米など世界中の事例を集めたこと(4)言語に関しても英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、カタルーニャ語、オランダ語、ヘブライ語、ナイジェリア英語、日本語、中国語、ロシア語、トルコ語ほかの様々な言語で書かれたり訳されたりしたテクストに関する研究を集めたことである。この本は3つのテーマ(「Literary translation and style文学翻訳と文体」「The author-translator-reader relationship作者―翻訳者-読者間の関係」「Literary translation and identity文学翻訳とアイデンティティ」)に沿って26名によって執筆されたもので、翻訳学の研究分野に貢献することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は読者受容研究を行う。文献研究などによる受容研究の準備をした後に被験者を集めて小グループを作り、翻訳テクストと非翻訳テクストに対する反応をアンケートやインタビュー形式で探る。さらに、あるテクストを女ことばの使用頻度を変えて訳しそれらに対する反応を調べるなど、多角的に読者受容について調査し、その結果が翻訳規範とどう関わるかを考察していきたい。読者受容研究で得られたデータはその後、論文としてまとめて発表したい。
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Causes of Carryover |
学会出席やインタビュー取材の費用が抑えられたため、平成30年度の支出額は当初予定よりも少なくなった。繰り越し分は今後予定している国際学会への参加費用や国内での資料収集のための費用に充てたい。
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