2019 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Research on Translational Style and Norms from a Gender Perspective
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16K02043
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
古川 弘子 東北学院大学, 文学部, 准教授 (70634939)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文学翻訳 / 文体 / 読者受容 / 規範 / ジェンダー・イデオロギー / 女ことば / 児童文学 / 女性文末詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、フェミニスト作家による小説の翻訳テクストの読者受容研究を行った。分析対象に選んだのは『パワー』(N. オルダーマン著、安原和見訳、2018)である。これは男女の力関係が逆転した社会を描いた小説で、実社会では女性が受けることの多い差別や制限を男性が体験していく様を描く。小説中に女性グループによる男性のレイプ事件を描いた部分があるが、そのシーンの読者受容を大学生対象としたアンケート調査で行った(被験者147名)。その結果、女性が男性をレイプするシーンのほうが、その逆の場合よりも残酷さが増すことが分かった。また、残酷なシーンはそれが翻訳テクストだと認識されると読者とテクストとの心理的距離が広がる可能性があることも示された。 これらの結果の背景と要因を知るために、日本におけるジェンダー・イデオロギー、フェミニズムの受容、女性の身体に関するイデオロギー、女性に対する差別などについて理論と実際の両面から知る必要性を強く感じたため、その後は、理論的背景と社会・文化・政治・経済的な状況について探るための文献研究に専念した。 具体的には、フェミニズム理論、性役割、母性、セクシュアリティ、メディアと性描写、教育とジェンダー、日本と世界の女性史とジェンダー史、フェミニズム文学批評、男性学、性暴力、性的マイノリティ、身体論、哲学などについてのジェンダー関連の文献研究、性被害や性差別の当事者による言説などについての研究、さらには、フェミニスト作家による様々なジャンルの文学作品(小説・劇・詩・映画・漫画など)や女性の問題を題材とした多方面のジャンルにわたる文学作品の分析などを行った。
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