2018 Fiscal Year Research-status Report
産業連関法による沖縄観光の内包型資源・環境負荷およびフットプリントの推計
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16K02073
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
金城 盛彦 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (30317763)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 沖縄観光 / 内包型資源利用(環境負荷)原単位 / キャリングキャパシティ / 産業連関分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
たとえば,産業が自産業の製品の生産を行う上の使用する水は直接使用と言いますが,実際の生産活動では,その他に原材料の購入を通じ,他産業に負担させている間接的な水使用が有ります。両者の総和を産業の生産量で割ったものが「内包型原単位」になりますが,水など,対象とする資源(環境)によっては,産業だけでなく,家計の利用(負荷)も見込まれます。研究では,この家計も加味した「内包型原単位」の推計も加えましたが,その先行研究は国内外で様々なものがあり(D.Rosa,2010,加賀他,2001など),未だ統一的な手法が見出せていません。 一方で,研究代表者が行った温室効果ガス(二酸化炭素)を踏まえ,現在,研究室の院生と共に,実際にこの「内包型原単位」を用い観光が地域(沖縄)の水資源にもたらす負荷の推計を先行実施しています。沖縄県が対象の産業別の水の直接使用原単位は存在しないため,研究計画に則り,東京都市大学の伊坪研究室で全国を対象に推計した産業別の原単位を援用しました。研究成果は「 日本国際観光学会第22回全国大会」に於いて発表されました。 さらに,以前研究室の所属していた院生と共に進めた,労働力を人的資源と考え同じく「内包型原単位」の発想の応用研究の成果発表を「日本国際観光学会第22回全国大会」で行いました。研究により,「内包型原単位」を用いれば観光産業のみ(直接)だけでなく,関連産業を通じて他産業に派生する(間接)雇用の把握が可能なことが示されました。研究は,産業連関分析を用いた従来の雇用分析が,観光産業のみ(直接)の誘発効果のみを把握していて,不充分なものである可能性を示すことにもつながりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れている理由は,2つあります。ひとつは,家計の消費も加味した「内包型原単位」の先行研究は国内外で様々なものがあり(D.Rosa,2010,加賀他,2001など),未だ統一的な手法が見出せていないからです。 一方で,二酸化炭素に続き水と,個々の資源(環境)の使用(負荷)の推計は進んでいます。ただし,現時点でも沖縄県を対象とした資源(環境)の直接利用(負荷)原単位は存在しません。よって,全国の産業を対象に推計された直接利用(負荷)原単位を代用して来ました。しかし現在,この沖縄県の直接利用(負荷)原単位の推計に着手しています。この方針の修正が遅延のもうひとつの理由です。 方針を修正した理由は,「内包型原単位」の手法で資源(環境)利用(負荷)には温室効果ガス(二酸化炭素)や水のように代用可能な全国の直接利用(負荷)原単位が必要です。しかし,全国のデータなど,それら代用可能な直接利用(負荷)原単位が存在しない可能性は小さくないからです。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,当初計画していた,分析対象の資源(環境)の対象を道路や空間と拡大する方向ではなく,すでに分析を行った二酸化炭素や水を対象に,ただし,その「内包型資源使用(環境負荷)原単位」の推計に必要な直接利用(負荷)原単位を,沖縄県独自のものに換えることを検討(修正)し始めています。 この方針の修正により,明らかになされる観光の資源利用(環境負荷)の種類は減るかもしれませんが,今後,代用が可能な全国の産業を対象にした資源や環境の直接利用(負荷)原単位が存在しない場合,それらを自ら推計する術を得ることに繋がります。 沖縄県同様,広範な基礎データを得ることが技術,物理面で難しい地方を対象に,本研究の手法を適用する場合,むしろこの方針の方が有益と判断します。よって今後は,この方針に則り,沖縄県の『工業統計』などを援用し,沖縄県を対象とした資源や環境の直接利用(負荷)原単位の推計を行って行きます。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,産業連関法による「内包型原単位」の理論的統合に先立ち 「水の利用(負荷)原単位」の推計を先行させたことに起因します。推計では東京都市大学の伊坪研究室が全国の産業を対象に推計,公開している直接利用(負荷)原単位を用いました。その結果,この段階では,同データを整理するための人件費を除き,購入費が掛かりませんでした。同時に,データが揃ったことで,研究が進んだため,この原単位の購入費に代わり,研究成果の発表のための学会(国内)出張経費を計上しました。さらに,2019年夏のAnnual Hawai'I Conservation Conferenceでの発表に備え,ハワイの観光の資源(環境)負荷状況などを視察するべく海外出張経費を計上しました。 今後は,さらなる資源(環境)の利用(負荷)原単位の推計に代わり,全国のデータを代用した温室効果ガス(二酸化炭素)や水について,沖縄県の直接利用(負荷)原単位を用い推計します。よって,必要データの購入や入力補助は今後も必要ですが,広範な調査が質量共に難しい地方の場合,推計は既存データを活用し行う場合も少なくありません。 よって,結果的に沖縄県の直接利用(負荷)原単位の推計のための新たなデータの調査,購入のための経費よりは,やはり研究成果を国内外で報告する経費が必要になるものと考えています。
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Research Products
(2 results)