2016 Fiscal Year Research-status Report
ビジネス・エシックスと異文化間コンフリクトの諸問題
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16K02131
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
松井 佳子 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (60255180)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ビジネス・エシックス / グローバル化 / 異文化間コンフリクト / 多様性(DIVERSITY) / 人間の尊厳 / グローバル・エシックス / コミュニケーション / 対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、グローバル化の趨勢の只中で不可避的に生み出される「異文化間コンフリクト」の諸問題を、理論的ならびに実践的なアプローチを相互補完的に考察すべく、平成28年10月22日に神田外語大学にて「国際研究会ワークショップ」を開催し、研究発表と討議を行った。 従来の企業活動は主に利益追求を目指し、その牽制役として企業倫理の視座が要請されていた。しかしながら、グローバル化の進展により、ビジネス業界はグローバル・スタンダードによる統制・統一の必要性が認識される一方、それと雁行あるいは対立する形で文化的多様性(DIVERSITY)や価値の多元性がグローバルな画一化を阻む要因として抵抗勢力となっている。つまり実際には、世界の多様な文化をお互いが対話を通して学び合い、拮抗しながらも、通底音としての相互尊重を通して関係の持続を模索するという方策以外はありえない、ということができる。 10月に開催した「国際研究会ワークショップ」において、ヘルシンキ大学のコスキネン氏は「現代の承認理論とコミュニケーションの前提条件」のなかで、人間同士のコミュニケーションはその前提として相互承認というお互いの人格の尊重が不可欠であることを主張され、愛知学院大学の岩佐氏は「現代の多文化的状況における日本の伝統のなかに根づく論理的・道徳的な思考法」において、日本独自の文化的特性がビジネス・エシックスとどのような関わりを持つかについて述べられた。神田外語大学のファン氏はオーストラリアの事例研究として移民が抱える言語問題への文化人類学的アプローチを提示され、同じく神田外語大の豊田氏は日本のある企業の持続可能性を下支えするものとは何かという問いを通して倫理的視座を炙り出された。そして研究代表者・松井は人間の尊厳がグローバル・コミュニケーションにおいていかに担保されうるかに関しての論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究会ワークショップを年2回開催予定であったが、1回のみの開催となった。 そしてその研究会では、具体的な企業活動における倫理的な状況や課題についてのセッションが持てなかったため、理論と実践両面からの相互乗り入れが遂行されなかったことは反省材料である。 しかしながら、コスキネン氏をはじめ研究会ワークショップで深く掘り下げて熟考された討議は、本研究プロジェクトにとって核となりうるものであり有意義な内容であったことは十分評価できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の平成29年度は、8月初めの国内の研究者による研究会と11月の国際研究会ワークショップを実施し、CIR(Corporate Intercultural Responsibility:企業の異文化間責任)という新しい概念の構築を試みるとともに、企業活動のなかでのコミュニケーションによる信頼関係の創出を、ビジネス・エシックスの新たな対応策として確立することを目指す。そのために研究会では、複数の分野からの意見のインターアクションが望まれる。よって準備を早くスタートさせて、最終年の平成30年度には論文集としてまとめるために研究プロジェクトのメンバーには論考構想も視野に入れてリサーチに取り組ませるようにする。
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Causes of Carryover |
年2回開催予定であった研究会ワークショップが1回開催となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は2回の研究会ワークショップを充実させるために招聘研究者の数を増やし、海外出張による研究の連携も視野に入れている。
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