2017 Fiscal Year Research-status Report
近代家族の解体から愛・性・家族の哲学的基盤の構築へ―変容する身体性を核として
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16K02152
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
宮野 真生子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40580163)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不倫 / いき / 遊び / 偶然性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は愛・性・家族をめぐる問題を、社会学的・現代的な視点とこれらの問題が生い立ってきた近代日本の思想史的視点から追究するものである。本年度もこの2つの視点から研究をおこなった。 1)社会学的・現代的な視点から愛・性・家族を考えるために、ゲストスピーカーとして江口聡(京都女子大学)、相澤伸依(東京経済大学)を招き、ワークショップを開催した(「不倫を哲学する」、2017年12月22日、福岡大学)。 さらに、性愛に向かう自他関係におけるふるまいの形、身体の形成について、そこに作用する印象の働きを考えるため、文芸共和国の会シンポジウム『印す・象る・消えてゆくー英文学/メディア論/哲学から印象―』にて「生成する関係、展開する印象」という題で講演をおこなった。また、このような遊びの空間で生成する人間関係と身体のあり方が近代日本でどのように形成されてきたのか、という問題については、 The Conference “Modernity Thinking in Taiwan and Japan: ‘Eating’ and the Cultural Base”(国立台湾大学、2018年3月8日)において「カウンターというつながり―『深夜食堂』から考える」と題した発表をおこなった。
2)思想史的な視点からの研究として、他者と共に生きる際に避けて通れない偶然性という問題を近代日本の哲学者がどのように論じてきたのかを明らかにするため、田辺哲学シンポジウムで「現在の動性と偶然性への視座―『社会存在の論理』と『偶然性の問題』」と題した発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書では、平成29年度はとくに身体の問題と現代における愛・性・家族の問題をクローズアップする予定にしていた。前者については、当初の予定とは少し違う角度(食)を加えることで、思想史的・哲学的な広がりを得たと考える。後者に関しては、現在関心の高い「不倫」の問題を「そもそも不倫を哲学が扱うとはどういうことか」というメタ的な観点から議論をすることで、愛・性・家族の問題を哲学・思想史的に扱うための理論的基盤構築の一助とすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度にあたる平成30年度は、ここまで進めてきた、愛・性・家族の個別のテーマをめぐる問題を他者との共生という結論へと着地させるための作業をおこなっていく予定である。とくに、昨年度、新たに着想を得た「食」という視点を補助線として、食と性愛、食と家族の関係などを捉え返すことで、身体性をもつ個人が他者といかに関わり生きていくのかがより明らかになると考えている。 また、偶然性を核とした他者との生のあり方を九鬼周造の哲学研究としてまとめ、出版する予定である。
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Causes of Carryover |
年度末の海外出張のため、領収書関係が年度内に間に合わなかったため、当初計上していた謝金分が支出できず、余剰が生じた。
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