2018 Fiscal Year Annual Research Report
New critical edition of the Maitrayani Samhita with a study of its language, ritual and thought
Project/Area Number |
16K02167
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
天野 恭子 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (80343250)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古代インド / ヴェーダ / 祭式 / 写本 / マイトラーヤニー・サンヒター / 願望祭 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代インドの祭式文献群であるヴェーダ文献のうち、最古層の散文資料であるマイトラーヤニー・サンヒター(紀元前900~800年前後の成立とされる)が研究対象である。本研究は次の二つを目的としている:1)同文献の新写本資料を用い、精度の高い校訂本を作成すること、2)同文献の言語および記述される祭式・思想について考察すること。 最終年度(2018年度)には、マイトラーヤニー・サンヒター全4巻のうち第I巻の原典校訂を、完成に向けて大きく推進した。5名の研究補助者(ポスドク2名、学生3名)による補助作業を得て、校訂作業および校訂本のレイアウトを進めた。校訂本を出版する予定であるHarvard Oriental Seriesの監修を行うM. Witzel教授と9月に打ち合わせを行い、校訂本の最終形を確認することができた。第I巻は現在、出版準備の最終段階にある。 マイトラーヤニー・サンヒターの祭式・思想の研究としては、かねてより、同文献の成立背景解明の一つの鍵を握ると考えてきた、異端的な儀礼を扱う章について、その内容を詳しく検討し、7月に第17回国際サンスクリット学会(ヴァンクーヴァーにて開催)において発表を行った。最古層の祭式文献であるマイトラーヤニー・サンヒターに、すでに異端的な儀礼が現れることは、ヴェーダ祭式の成立についてこれまで考えられてきた、正統バラモン祭官だけがその担い手であったという想定を、大きく覆すものであり、非常に注目された。さらに、3月に行われた、京都大学人文科学研究所共同研究「ブラフマニズムとヒンドゥイズム」のシンポジウムにおいて、ヴェーダ祭式として記述される「願望祭」と呼ばれる祭式が、社会的に果たす役割について論じた。同研究も、文献成立の社会背景の解明に寄与するものである。
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