2019 Fiscal Year Annual Research Report
War, Government, Politics: Philosophy of Michel Foucault and Critical Thought in France after May 68
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16K02211
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
箱田 徹 天理大学, 人間学部, 准教授 (40570156)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミシェル・フーコー / 社会哲学 / 68年5月 / アウトノミア / サンドロ・メッザードラ / 社会哲学 / 採取 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1つめとして、ミシェル・フーコーの戦争論にかんする研究を行った。具体的には、ポスト68年5月の政治状況と強い関係にある、1970年代前半のフーコー思想を取り上げ、政治的主体をめぐる問いの展開を「人民(民衆)」と「戦争」というキーワードを手かがりに考察し、前半の「戦争」概念を軸とした権力論と、後半に現れる統治論との接地面を探った。そして人民-民衆という反乱の主体が、契約の主体としての個人の集合体である人口へと作りかえられていくプロセスについてのフーコーの議論を再評価することが、権力論から統治論への滑らかな移行という通説的なフーコー理解を変える契機となることを示した。 2つめに、国際研究集会の開催がある。ポスト68年5月のフランス社会哲学の現代的な受容と発展を考える上で重要な、1970年代以降のイタリアの批判的社会哲学をアップデートし、国際的な活躍がめざましいサンドロ・メッザードラ氏を招聘しての国際研究集会を開催し、現代における新自由主義批判とフーコー思想との接点を探った。氏はフーコーのマルクス読解に焦点をあて、イタリア・アウトノミア派によるフーコー受容史とも重ね合わせるとともに、労働力が生産力へと変形する過程における身体の重要性をフーコーが指摘した点を高く評価した。そしてフーコーのこのようなマルクスの読みが、今日の移民問題や労働問題を批判的に考えるうえできわめて示唆的であることを指摘した。 このほか、国際研究集会での議論を引き受けるかたちで、今日における「採取主義extractivism」の問題を気候変動や労働にかんする問題との関係で考察した。またフーコー『肉の告白』における主観性の問題を統治論の角度から考察した。
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Research Products
(4 results)