2017 Fiscal Year Research-status Report
インド・ミャンマー国境に暮らすナガのポリフォニー民謡に関する音楽民族学研究
Project/Area Number |
16K02242
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
岡田 恵美 琉球大学, 教育学部, 准教授 (60584216)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民謡 / ポリフォニー / ナガ / ナガランド / インド北東部 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の3月に実施したフィールドワークでは,研究対象であるインド北東部少数民族ナガの中でも,ナガランド州都コヒマ近郊のコノマ村を中心にアンガミ民族の民謡や習俗に着目した。アンガミ民族は,ナガの中でも6番目に人口が多く,およそ14万人(2011年インド国勢調査)である。そこでの調査内容の分析から,これまで主に注目してきた隣接するチャケサン民族(ナガの中では5番目に多い。およそ15万人)との共通点や相違性について抽出することができた。 民謡においては,元々,両民族はテンディミア語から派生した言語を使っているため,歌詞には多少のバリエーションは見られるものの,類似したものも多いこと,またポリフォニーの民謡で使用される音列構成音はアンガミ民族の方が幅広い点が明らかとなった。 伝統的な民謡の伝承状況に関しては,これまで調査してきたチャケサン民族の村々よりも危機的な状況に直面しており,民謡レパートリーの保存や次世代への継承の課題が浮かび上がった。 上記の現地調査に加え,今年度は7月に,ナガの音楽文化や習俗とも共通項をもつ,台湾原住民ブヌンのシンポジウムも実施した。両者は国家の中ではいずれもマイノリティな山岳民族であり,20世紀にキリスト教化されたという点や,伝統的な音楽文化,織物文化,狩猟文化,首刈りの風習,村の共同体システムなどにおいて類似点も見られ,南アジアに限らない東アジアむ含めた比較的視点から研究する必要性も重要であることがわかった。またこれについては論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の3月調査は,ナガランド州の北部に居住するコニャック民族に焦点を当てて、調査を実施する予定であった。しかしながら,調査期間がナガランド州の州選挙と重なり(選挙期間は学校等は休校となり,政治的不安定から交通機関も乱れる),当初予定していた移動の交通機関の手配が困難となり,急遽、調査対象を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究も折り返し地点を迎え,30年度はナガランド州の北部地域での現地調査を実施する。8月に行う調査では,州北部のロングレンとモンにてポムとコニャクの民謡を対象に調査を進める。 ナガランド州の中でも,北部地域はキリスト教化や近代化が波及するまでに時間を要した地域であり,戦後においても,コニャク社会では首狩りの風習が行われていた。首狩りは村の狩場を守る行為であると同時に,勇敢さを示す成人男性への通過儀礼としての意味もあった。現在でこそ,こうした風習は消滅したが,山岳の農村に伝わる民謡には,隣村との闘いを前に集団で歌われた出草歌や首を狩った英雄の歌が残存している。伝統的なナガ社会にとって,集団で歌うことは生活の一部であり、複数で声を重ねる合唱は,共同体の連帯性や村や部族の生存そのものにおいても重要な役割を担ってきた。 今年度は,こうした北部の民謡の状況を調査分析し,これまで考察してきた南部の状況との比較を通して,ナガの全体像を俯瞰し,そこから各民族の民謡における特異性や共通性を抽出する。
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Research Products
(2 results)