2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02264
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
野村 幸弘 岐阜大学, 教育学部, 教授 (20198633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 円空 / 観音菩薩像 / 様式分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、東北・北海道に残る円空作品で、おもに前回、所蔵者との日程の都合がつかず、調査が出来なかった北海道爾志郡乙部町の作品について、令和2年10月1日から10月3日までの3日間にわたり調査を行った。作品の所蔵者・所有者の許諾を得て、調査、撮影ができた作品は、乙部町、鳥山神社観音堂の観音菩薩像、龍寶寺の観音菩薩像、元和八幡宮の観音菩薩像、本誓寺の観音菩薩像、乙部町民会館の観音菩薩像、そして青森県青森市油川大浜、浄満寺の観音菩薩像の6点である。 上記、乙部町の円空仏5点を調査したことによって、その様式の漸次的な変化が確認でき、北海道の道南を円空が福島町、上ノ国町、江差町へと北上し、さらに乙部町からせたな町まで赴いたことが判明した。 また、円空が東北・北海道へ旅立つ直前に制作した岐阜県関市天徳町、天徳寺の釈迦如来坐像を12月17日に、そして旅から戻ったあとに制作した岐阜県揖斐郡揖斐川町、瑞巌寺の観音菩薩像を12月18日に調査し、これら2点のおもに顔、耳、手の細部表現に注目して、東北・北海道の円空仏の様式と整合的に関連付けることができた。これによって1665年から1667年までの円空の初期作品の制作順序が明確になったと考えられる。この研究成果は、大学の紀要に掲載した。 10月22日には、さいたま市立博物館主催の「さいたま市民大学講座」で「様式から見る円空の彫刻」と題して講演を行った。その際、さいたま市、薬王寺所蔵の円空仏の調査を行うことができた。薬師如来、日光・月光菩薩、十二神将をはじめ、全29点の円空仏の写真は、すでに詳細なデジタルデータがあり、それを提供していただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度に行った東北地方に残る円空作品の調査では、青森市油川大浜、浄満寺での調査を終え、2015年2月現在、確認されている円空作品32点中、28点まで完了した。個人蔵以外で、未調査の円空作品は、残り沖館神明宮の1点のみとなった。 北海道における調査では、現在、確認されている円空作品51点のうち、今回は5点、調査し、これで計24点となった。新型コロナ感染拡大のため、予定していた北関東の円空作品の調査がほとんど出来なくなり、研究期間延長の申請をして、次年度に延期せざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
東北地方の未調査作品は、沖館神明宮所蔵のもので、これについては、調査の許諾が得られ、令和3年3月に調査できることになっていたが、新型コロナ感染拡大のため、実現できなかった。その調査を今年度行う予定である。この調査結果が得られれば、これまで調査できた東北・北海道の円空作品のカタログを、暫定的ではあるが、和文・英文併記で作成する。 北関東の円空仏については、おもにさいたま市、薬王寺の29点の円空仏について、大善院、久伊豆神社など、ほかの北関東に残る円空仏の調査とともに研究する予定である。 令和2年度にできなかった富山の29体、長野の23体の円空作品の調査にも着手する。
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Causes of Carryover |
前年度に執行できなかった調査旅費、および、カタログの制作費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)