2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02282
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Research Institution | Yokohama College of Art and Design |
Principal Investigator |
濱田 瑞美 横浜美術大学, 美術学部, 准教授 (30367148)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 石窟 / 摩崖造像 / 仏教美術 / 維摩経変 / 図像研究 / 南北朝時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国の南北朝時代から宋時代までの石窟摩崖にあらわされた維摩経変を実地調査して得た知見をもとに、維摩経変の図像学的研究を行うものである。個々の作例の図像の研究に加え、石窟摩崖という宗教的空間の中における他の図像との関係性も含め、全体的な図像構成からも解明を行う。 初年度である本年度は、主に中国の南北朝時代および隋時代の維摩経変の作例を対象に、甘粛省炳霊寺石窟、敦煌莫高窟、河南省龍門石窟、鞏県石窟、水泉石窟等の実地調査を行った。 南北朝時代の維摩経変の特徴として、維摩と文殊を仏龕や壁面の左右に振り分け配置する作例が多いが、炳霊寺石窟の北魏窟において弥勒菩薩に取り替わるかたちであらわされている例を確認し得た。このことは、同時期の維摩経変が弥勒菩薩と類似の意義を有していた可能性を示すものであり、維摩経変が単に当時流行していた『維摩経』の内容を造形化したものであるという以上に、釈迦多宝の二仏並坐像や弥勒菩薩像等に象徴されるような仏法相承の一モチーフとして石窟摩崖に造形されていたことを示唆するものとして捉えられる。また、隋時代の維摩経変に関しては、基本的に中原の南北朝時代の図像を踏襲していることを確認した。 本年度の研究の成果として、中国南北朝時代の石窟にみられる維摩経変に関しては論文にまとめ、来年度、学術雑誌で発表の予定である。敦煌石窟の隋代の維摩経変に関しては、来年度8月の敦煌研究院主催の国際学会で口頭発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた中国南北朝時代および隋時代の維摩経変の実地調査を計画通りに行うことができ、加えて図像学的新知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
唐代以降の石窟摩崖を中心に、維摩経変の調査ならびに図像学的研究を行う。 唐代以降の維摩経変にはさまざまなモチーフが入り込み、図像は細かく複雑なものとなる。なかには、作例数は少ないものの、題記がのこっている維摩経変もある。題記の文言と経軌との照合を行いつつ、各モチーフの図像研究を行っていく。 加えて、石窟摩崖全体のなかで維摩経変の果たした機能についても考察していく。
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Causes of Carryover |
3月に使用した研究費(消耗品費)の会計処理が次年度の処理となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に使用済み。
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