2016 Fiscal Year Research-status Report
ザクセン選帝侯アウグスト二世旧蔵日本磁器の研究―西洋における日本像の受容史的考察
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16K02291
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
櫻庭 美咲 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 機関研究員 (20425151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 正明 学習院大学, 文学部, 教授 (70392884)
野上 建紀 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (60722030)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 陶磁史 / 美術史 / 在外日本美術 / 工芸史 / 文化財 / 東西文化交流 / 考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)第1回ドレスデン調査 2016年8月7日~8月14日:ドレスデン国立美術館磁器コレクション館所蔵アウグスト強王旧蔵日本磁器を中心に肥前磁器約420点の熟覧、アルンシュタット城、モーリッツブルク城の調査を実施した。今回の調査は、クリスチャン・ヨルフ名誉教授(ライデン大学)やコーラ・ヴュルメル学芸員(ドレスデン国立美術館磁器コレクション館)をはじめ、ドイツ、オランダ、アメリカから参加した研究者7名が参加しての資料検討会と会議も兼ねた国際共同調査に参加する形でおこなった。 (2)有田歴史民俗資料館調査 2016年12月5日~12月6日:第1回ドレスデン調査で閲覧した日本磁器(肥前)の生産窯を特定するため、有田歴史民俗資料館調査が所蔵する有田地域の古窯から発掘された陶片資料を調査した。 (3)第2回ドレスデン調査 2016年2月19日~2月21日:同館所蔵アウグスト強王旧蔵日本陶磁のうち、とくに金襴手様式の肥前磁器ならびに陶器(京焼)約100点を熟覧した。今回も、ヨルフ名誉教授、ヴュルメル学芸員、ドレスデン側スタッフを加えた国際的なメンバーで共同調査をおこなった。 (4)ドレスデン国立美術館所蔵アウグスト強王旧蔵磁器コレクション総目録化事業(以下ドレスデンプロジェクトと称す)への協力:第1回調査で閲覧した全資料の考古学的位置づけを特定し、その他の基礎情報とともにデータベースへの入力を完了し、メモ写真の整理を終えた。作成したデータベースはすでにドレスデン国立美術館と共有し、ドレスデン側でのプロジェクト全体の情報管理にも活用されている。現在、総目録化事業のための目録執筆を継続中である。 (5)社会への情報公開:「読売新聞」全国版・西日本版(2017年2月27日付)に、ドレスデンプロジェクトの活動が、記事「王の磁器 全容つかめ・年代、産地DB化へ国際研究」として報道された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研による研究は、ドイツ・オランダその他の欧州諸国、アメリカ、中国など世界各国の研究者からなるドレスデンプロジェクトへの協力を軸とする。ドレスデンプロジェクトにおいて我々は、研究成果の発表のみならず、数少ない対象資料の生産国側の研究者として、日本の独自のノウハウおよび情報をドレスデンプロジェクトに提供することによる協力も求められている。 初年度は2度にわたる海外調査により、海外の研究者達と意見や情報を直接交換し、役割分担を決定した。世界各国の多くの研究者が取り組んだ結果、多様な分岐を遂げてきた日本磁器研究の問題についても意見交換をした。プロジェクトの個々の参加メンバーが統一基準に則って最終成果のとりまとめができるよう、分類方法や用語統一等の基準を検討するためのディスカッションにも参加することができた。 情報公開への準備としては、第1回調査の調査情報のデータベース入力と写真整理を完了した。データベースの内容に関するドレスデン国立美術館との調整も大方終了し、本格的に研究を進めるための体制を整えることができた。さらに、第1回調査で閲覧した肥前磁器の一部は、生産地の古窯からの出土資料の調査により生産窯を把握するという新知見を得た。 双方向的な協力、情報交換を実現し、ドレスデンプロジェクト全体の研究環境の整備に学術的な貢献ができた点が現時点における最大の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した研究目的・計画通り、ドレスデン国立美術館磁器コレクション館所蔵アウグスト強王旧蔵日本磁器の調査および調査情報のとりまとめをおこなう。総目録化事業のための目録執筆を進めつつ研究をまとめる予定である。 現在、当初の計画以上の対象範囲について、ドレスデン国立美術館磁器コレクション館と緊密に連絡をとりあいながらの共同作業が進行中である。当科研メンバーが日本磁器調査の全体把握を全面的にバックアップする協力体制を軌道に乗せることができた。 今年度も初年度におこなった現地調査先機関との共同作業を継続しながら、最終的な研究成果の集成につなげていく方針である。
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Causes of Carryover |
平成28年度の調査は、第2回の調査の実施時期を2月としたことから、物品購入が可能な期間より以降に科研の残額が確定するスケジュールとなった。そのため、予定していた物品購入を延期し、人件費(翻訳・校正用)の使用も、同様の理由により次年度送りとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、次年度の物品購入費用に充てるとともに、人件費も次年度以降に使用する計画である。
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Research Products
(23 results)