2017 Fiscal Year Research-status Report
ザクセン選帝侯アウグスト二世旧蔵日本磁器の研究―西洋における日本像の受容史的考察
Project/Area Number |
16K02291
|
Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
櫻庭 美咲 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 機関研究員 (20425151)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 正明 学習院大学, 文学部, 教授 (70392884)
野上 建紀 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (60722030)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 東西交流史 / 美術史 / コレクション史 / 考古学 / 工芸 / 国際交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)第3回ドレスデン合同調査 2017年8月7日~8月21日:大橋康二(佐賀県立九州陶磁文化館名誉顧問),荒川正明と共同でドレスデン国立美術館所蔵アウグスト強王旧蔵日本磁器を調査し,肥前磁器を対象に熟覧およびメモ写真の撮影をした。ユリア・ヴェーバー(ドレスデン国立美術館館長),コーラ・ヴュルメル(同)やクリスチャン・ヨルフ(ライデン大学),孫悅(北京故宮博物院館員)等国際共同研究プロジェクトメンバーと共に,資料検討会等を行った。さらに,ドレスデンの図書館で,日本宮に関わる文献調査も行った。 (2)東洋陶磁学会大会への参加・打合せ 2017年10月21日~22日:多治見市産業文化センターで開催された第5回東洋陶磁学会大会「自然科学系の東洋陶磁研究報告」に参加し,肥前磁器にかかわる自然科学系分野の研究動向について情報収集した。2018年度実施予定のドレスデン国立美術館調査に関わる打合せもした(櫻庭・大橋・野上)。 (3)日本に所在する強王旧蔵肥前磁器の全体像把握:2017年8月ドレスデンにて,日本所在の強王コレクションの所在を確認するため,ヴュルメルらと意見交換をした。帰国後ドレスデン側と共同で依頼状を作成し,依頼状をドレスデンから郵送した。現段階で7件の所蔵者から回答を得て,強王コレクションの日本における所在を確認することができた。これらの情報はとりまとめて集計し,独訳してドレスデン側と共有した(櫻庭)。 (4)アウグスト強王旧蔵磁器コレクション総目録化事業への協力:同事業に向け、第3回調査の調査データの整理を継続中である。総目録化の基礎となる考古学的情報は,これまで行われた全調査の資料を対象にリスト化し,ドレスデン側に提出した(大橋)。同事業のための解説執筆も計画通り行われ、約300点分を提出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本側のメンバー間の情報共有や打合せを活発におこない,日独間の意見交換も頻繁にメールで行ってきた。日本の各メンバーのみならず,ドイツ,オランダのメンバーとも極めて潤滑に連携しあい,盤石な信頼関係を構築できている。結果,日本各地に所在する強王旧蔵品と推測される肥前磁器の所蔵者からも協力を得ることができ,国内における強王コレクションの全体像の把握も順調に進んでいる。これらの結果をドレスデン側と日独バイリンガルで情報共有することもできた。 文献研究と文献資料の収集は,ドレスデンの「日本宮」研究を軸とするドレスデン宮廷における肥前磁器への評価・認識,ドレスデンにおける「日本像」の検討を中心におこなった。 今年度のアウグスト強王旧蔵磁器コレクション総目録化事業への協力は,主として①磁器資料調査,②執筆,③考古学的情報の提供の3点を中心に行った。①磁器資料調査は,3名の専門家を現地に派遣し,本プロジェクトの対象となる磁器を調査した。調査後の調査情報の整理も進み,実務面でも着実な成果を上げていると言う事ができる。②総目録のための執筆(作品解説)は,今年度中に提出を課された作品解説の大半を、ドレスデン側に提出することができた。よって当初の目的を十分達成している。③ドレスデンへの考古学的情報(産地・年代)の提供はも滞りなく進められ,ドレスデン側にも提出し共有している。有田の窯跡における肥前磁器の出土例との照合をふくめた考古学的位置づけの考証も進められ,情報の蓄積・検証を継続中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)第4回ドレスデン合同調査:2018年9月,大橋康二,野上健紀,櫻庭美咲がドレスデン国立美術館所蔵アウグスト強王旧蔵日本磁器の共同調査を実施する予定である。 (2)国内における強王コレクションの所在調査:2017年度未着となった調査アンケートの追跡調査を行い、集計結果を充実させることを目指す。 (3)研究会と打合せの実施:当初計画にはないが、2018年6月,ドレスデン国立美術館が学会(ワークショップ6/11,12・シンポジウム6/13, 14)を開催することが決まった。同学会に本科研のメンバーのうち5名が,学会の主催者側によって招聘され(旅費も同館負担),ワークショップないしシンポジウムでの口頭発表を行う計画である。 (4)文献研究と文献資料の収集:強王コレクションに関する文献調査は2018年度も継続する。昨年度まで行ってきた強王コレクションと密接な関係をもつ日本宮関連の調査は,前年度刊行される計画であったがいまだ未刊行のドレスデン工科大学による研究の成果報告書の刊行を待ち,刊行後できるだけ速やかに資料調査を行う計画である。 (5)総目録の執筆と考古学的情報提供:執筆は2017年度までにおこなった調査結果に基づいて追加項目の執筆を完了させる。考古学的情報は,今年度の新たな調査の結果をとりまとめ,年度内の提出を目指し進めていく。肥前磁器の産地における出土例との照合をふくめた考古学的位置づけの考証は,最終年度は考古学者2名体制で今年度の調査をおこなうため,大幅な加速が期待される。 (6)研究のまとめ:各自研究成果のとりまとめを行い,基本的にはドレスデン国立美術館の総目録事業を通じて成果発表する。ドレスデン側との調整がつけば,国内での研究発表会も実施する。
|
Causes of Carryover |
2018年度に,3名がドレスデン国立美術館での調査,1名がドレスデン国立美術館で開催予定の学会に参加するため,ドレスデンへの渡航を計画している。しかし,2018年度支給予定の助成金では不足するため,2017年度に受けた助成金を充当し不足分を補う。そのため必要となる資金を次年度に繰り越した。
|
Research Products
(10 results)