2016 Fiscal Year Research-status Report
「日本映像記録センター」の研究 ~眠る映画遺産の発掘~
Project/Area Number |
16K02322
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
奥村 賢 いわき明星大学, 教養学部, 教授 (30552583)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 映像遺産 / 映画遺産 / ドキュメンタリー / 日本映像カルチャーセンター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、具体的には「日本映像カルチャーセンター」が経済的にきわめて厳しい状況のなかで収集し続けた映像作品の綿密な再検証をとおして、現在においてもなお、これら陰に隠れてしまったフィルムがわが国にとって貴重な映像遺産となっていることをあきらかにし、それに正当な評価をあたえようとするものである。その目的を達成するため、28年度から当該フィルムについての綿密な再検証を開始した。 28年度に点検した映画フィルムの件数は、200件である。具体的な作業は以下の通り。(1)フィルムチェック リスト作成(タイトル・素材・色・尺・時間・ロール数・製作者)(2)フィルムチェック表の作成(チェック項目:酢酸臭・収縮・変色・剥離・粉の屈折・テープ繋ぎ・ べとつき・傷の有無・カビ・汚れ)(3)エンドクレジットの画像データの撮影 29年度も引き続き、残りのフィルムについて同作業を継続するが、少なくとも点検を終えたものについてはいままで不分明だったフィルムの実際の状態(出所・内容が確認できるかどうか、上映可能かどうか、劣化はどれほど進んでいるかなど)があきらかになってきており、点検作業の成果があらわれたといっていいだろう。 29年度は、この作業を通し、さらにその全体像に迫るつもりである。また、最終年度は公開記念シンポジウムを開き、そこで映像コレクションのなかの一本を上映する予定であるが、本年度はこの上映に必要な字幕制作も開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「日本映像カルチャーセンター」が所蔵している映像作品コレクションは、現在、川崎市市民ミュージアムに寄託されている。したがって第一段階の作業となるフィルム調査やカタロギング作業は、同ミュージアムの協力を得ておこなうことになった。寄託フィルムの総数は16mmが258本、35mmが237本だが、劣化フィルムも含まれているので、フィルムの点検作業は専門業者のヨコシネDIA(株)に依頼した。現物確認の作業が完了したフィルムについては、随時、その基本データを作成していった。これが第二段階のカタロギングの作業である。 寄託フィルムのおおよその内訳は以下のようになっている。 A)一般収集:16mm×127本 B)特別収集(1)ジャン・ルーシュ作品:16 mm・19本/35mm・11本(2)東独テレビ(DDR)作品:16 mm・9本/35mm・53本(3)カナダ国立映画局(NFBC)作品:16 mm・52本(4)ソビエト連邦作品:16 mm・33本/35mm・121本(5)追加分:16 mm・18本 28年度に実施した映画フィルムの点検件数は200件であるが、少なくとも点検を終えたものについてはいままで不分明だったフィルムの実際の状態(出所・内容が確認できるかどうか、上映可能かどうか、劣化はどれほど進んでいるかなど)があきらかになってきており、点検作業の成果があらわれたといってよく、研究課題の進捗状況としてはおおむね順調な滑り出しをみせたといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、28年度の作業を引き続き継続する。前回と同じ専門業者のヨコシネDIA(株)に残りのフィルムの点検作業を依頼し、その大半を終了させるつもりである。そうなれば、コレクションの全体像に迫れるからである。そして点検作業の全体としての結果があきらかになってきた段階で、全フィルム・データの整理をおこなう予定である。 また、本研究の最終年度(30年度)は公開記念シンポジウムを開き、そこで映像コレクションのなかの一本(フランスのドキュメンタリー映画)を上映することを計画しているが、本年度はこの上映に必要な字幕制作も開始する予定である。この件については、まず撮影台本の捜索から始めることになる。これが欠落していると、字幕制作がきわめて困難になるからだが、もし撮影台本等が発見できないときは、時間はかかるが、映画作品から直接、文字起こしをして、対応することになる。
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Causes of Carryover |
フィルム点検作業を依頼するにあたって書類上の手続きが難航し、発注が年度の後半の時期にずれ込み、結果、点検作業時間が不足し、点検を予定していた件数に至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
持ち越した助成金は前年度実施されなかったフィルム点検作業分に使用する。
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