2017 Fiscal Year Research-status Report
「日本映像記録センター」の研究 ~眠る映画遺産の発掘~
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16K02322
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
奥村 賢 いわき明星大学, 教養学部, 教授 (30552583)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 映画文化 / 発掘映画 / ドキュメンタリー / 字幕 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、具体的には「日本映像カルチャーセンター」が経済的にきわめて厳しい状況のなかで収集し続けた映像作品の綿密な再検証 をとおして、現在においてもなお、これら陰に隠れてしまったフィルムがわが国にとって貴重な映像遺産となっていることをあきらか にし、それに正当な評価をあたえようとするものである。その目的を達成するため、28年度から当該フィルムについての綿密な再検証 を開始した。 29年度に点検した映画フィルムの件数は9件で、前年度と比べ、本数が激減しているが、これはこの年度から始めた字幕制作に時間と経費を集中させたためである。当該コレクションの価値を広く知らしめるには、作品を公開上映する必要があり、字幕はその上映にとって必須要件となる。字幕制作にあたっては、一次資料として同時翻訳資料が残っていたものの、それだけに頼らず、映画研究者やロシア文化研究者など、専門家にも依頼し、字幕の監修作業も実施、字幕の適正さを追求した。こうして今回、字幕制作を実現できたことは、むしろ本研究がその最終目的に一歩、近づいたことを意味する。また、イギリス映画『夜行郵便列車』(1936)、ロシア映画『キノ・プラウダ』(1924)といった、今回字幕をつけたドキュメンタリー映画作品(フィルム作品)は、世界映画史的にきわめて重要視されてきたものだが、実質上、日本ではいままで字幕入りで上映されたことがない。その点でも今回の字幕制作は、画期的な成果だったといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は前年度から引き継いだフィルム調査やカタロギング作業を続行し、カタロギング作業を完成させる予定であったが、実際には字幕制作に時間と経費を集中させる結果となった。これは、貴重な映画遺産であるにもかかわらず、不孝にも埋もれ続けている映画作品に再びスポットをあて、正当な評価を付与させるのが本研究のもともとの最終的に目指すところであったことを再度、認識し、29年度は上記のような字幕制作を優先させるのが妥当と判断したからである。フィルム調査の重要性を知ってもらい、死蔵作品への再評価を強く促すには、なによりもまず、作業結果の産物である映画作品をスクリーンで確認してもらうのが先決であり、字幕は、外国映画上映には欠かせないものである。したがって、作業プロセスが多少、変更になり、カタロギング作業に遅れが生じたものの、この変更は結果的に妥当なものであったと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年度の30年度では、公開シンポジウムを開き、これまでの研究成果を発表し、広く世に問うことを研究活動の柱としている。このシンポジウムでは、今回の研究作業で字幕制作を実施したドキュメンタリー映画作品をまず見本例として上映する。ついで、その映画作品を題材に「映像記録」コレクションの貴重さや重要性について、各パネラーに専門家の立場から意見や評価を表明してもらい、今回の一連の研究活動の意味を掘り下げる予定である。これが活動の中心となるが、時間と経費に余裕があれば、未調査のフィルムについてさらに検査を続行し、カタロギングを完成させていく予定である。 また、字幕がまだ制作されず、なかなか陽の目を見ない映画作品が最終的に数多く残るであろう現状を考えれば、字幕制作の作業が今後も継続される必要があるのはあきらかで、本研究終了後も、その作業を主軸とした研究を続行させていきたい。
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Causes of Carryover |
30年度は研究成果を発表するシンポジウムを開催するため、その開催費用が生じる。また、当日公開上映するドキュメンタリーの3本のうち、残り1本がまだ字幕未制作のため、字幕入れの経費が必要である。経費の使用計画としては、このほか、上映作品点検のためのDVDプレーヤー購入と、フィルム検査に残額を充てる予定である。
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