2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02326
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小菅 隼人 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 教授 (40248993)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 舞踏 / 土方巽 / 大野一雄 / 身体 / 演劇 / シェイクスピア / インタヴュー / アンケート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「歴史的および比較演劇的視点から,芸術様式としての舞踏に明確な定義を与えること」である.それを達成するために,①インタヴューによって舞踏家自身の証言を得ること,②シェイクスピアを意識した演劇作品を参照すること,③研究成果を国内外において積極的に発表することで内容を再精査し,新たな証言者を発掘することを研究方法として意識した. ①については,土方巽の薫陶を受け,麿赤児,唐十郎などアングラ運動の指導者と深い関係があったビショップ山田の長時間インタヴュー,および,土方舞踏の「三人娘」と称された小林嵯峨の長時間インタヴューを共に公刊できたことで,本研究にかかわる一次資料を記録に残すことができた. ②については,当初,哀哭表現を中心に内容的な共通性を探る予定であったが,より広い視点が必要と考え,その手掛かりとして2016年に刊行された瀬戸宏『中国のシェイクスピア』を精査し,長編の書評として公表した.また,1993年RSCによる『リチャード三世』の上演批評を,再点検して新たに公刊できたことも成果である.さらに,舞踏のイメージ調査を国際アンケートという手法によって実施し,それを論文として公刊し,それを発展させる形で,新たに,演劇における「日本身体」(Japanese Body)のプロジェクトを立ち上げ,同様の国際アンケート調査に着手した. ③については,積極に国際学会での発表に取り組み,ハンブルクで行われたPerformance Studies international(PSi)では,発表およびパネルをコーディネート,サンパウロでのInternational Federation for Theatre Studies (IFTR)では研究発表を行い,本年2月のマニラにおけるIFTRでは,アジア演劇におけるパネルにおいてディスカッサントを務めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究目的を遂行するため,まず,インタヴューによって舞踏家自身の証言を得るという方針を立てたが,これは舞踏家による積極的な協力によって,2017年中にはビショップ山田と小林嵯峨という重要な2本の証言が公刊でき,さらに1本に進行中であることは予想以上の進展であった.但し,本研究に理解を示し,協力を惜しまなかった舞踏家和栗由紀夫の急死は非常に残念であり,インタヴューを取っておかなかったことが悔やまれる. 当初,内容的な方法論として挙げた,シェイクスピアを意識した演劇作品を参照することについては,日本演劇学会の学術誌『演劇学論集』に『中国のシェイクスピア』に関する書評論文を掲載したこと,『演劇を問う,批評を問う』(論創社)に1993年の『リチャード三世』の舞台批評を再公開できたことは成果と考えるが,その過程で,シェイクスピアに限ってしまっては舞踏を解明するにはあまりにも視野が狭くなることに気が付き,国際アンケートという手法をとることにより,舞踏および日本人の身体のイメージ調査を実施することにした.この部分は,当初からの方針転換である.これは予想以上の成功を収め,論文としても公刊することができた.したがって,研究計画の修正ではあったが,目的の遂行には資するところが大きかったと判断する. さらに,研究成果を国内外において積極的に発表することで内容を再精査し,新たな証言者を発掘するという方法論においては, PSiとIFTRを中心に2本の研究発表と1回のディスカッサントとしてのコメントを重ねることができ,これに伴って,国際的にも国内的にも研究協力者が得られたことは,大きな僥倖であった.
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Strategy for Future Research Activity |
上記,本研究の目的とそれを達成するための方法―インタヴューによって舞踏家自身の証言を得ること,研究成果を国内外において積極的に発表することで内容を再精査し,新たな証言者を発掘すること―に変わりない. 但し,当初あげた,日本的シェイクスピアの展開については,2016年度と2017年度におこない,慶應義塾アートセンター年報,『シェイクスピア―拡張する世界』および2017年度に『演劇学論集』に掲載された「中国のシェイクスピア」の書評その他の公刊をもってひとたびおいて,シェイクスピアに限った調査を,広い意味での演劇表現に表れた「日本人の身体」という視点にシフトさせ,アンケート調査と学会発表および論文の公刊の段階に移していくことにした. さらに重要なこととして,1960年代から80年代にかけて舞踏という芸術分野を開き,それを国際的に推進した世代が次々に鬼籍に入っていくという現実を見れば,舞踏家の言葉を直接的に残していくインタヴューを推進していくことが急務であると考えられる.2018年度は,まとめとして,国際アンケート調査,インタヴュー調査,研究グループの組織,研究業績の公刊を積極的に進めていきたいと考えている. 研究内容の具体的な企画立案については,慶應義塾大学アートセンター・土方巽アーカイヴとの共同作業,および,2018年度は,雪雄子,大須賀勇などのインタヴューと成果公開を行う予定である.研究協力者としては,萩原健(明治大学),宮川麻理子(千葉大学),田中里奈(ウィーン大学大学院)に引き続き協力を依頼する予定である. さらに海外における研究協力者としては,ピーター・エッカソール(ニューヨーク市立大学),キャサリン・メジュールらとすでに共同作業を行っているが,引き続き協力を依頼する予定である.
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Remarks |
国際アンケート調査,メンバーは小菅隼人,萩原健,宮川麻理子,田中里奈,Katherine MEZUR (University of California)
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Research Products
(9 results)