2018 Fiscal Year Research-status Report
新移民音楽の受容とフォーク音楽との関係を、音楽言説の観点から検討する
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16K02352
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
黒田 晴之 松山大学, 経済学部, 教授 (80320109)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大衆芸術 / フォーク / 新移民 / 音楽言説 / クレズマー / レベティコ |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年の京都人類学研究会でのシンポジウム、『共同体を記憶するーユダヤ/「ジプシー」の文化構築と記憶の媒体』で報告した内容をもとにして、本研究課題の中間報告をまとめることができ、同研究会のオンライン・ジャーナルに投稿した。 2017年度の「今後の研究の推進方策」で触れたHennry Sapoznik氏については、Sapoznik氏が2018年4月に来日されたさい共同で研究成果報告会を開き、新移民の音楽が注目されはじめた歴史的背景、YIVO (ユダヤ学研究所)が初めてクレズマーのサウンド・アーカイヴを構築した経緯、1950年代生まれのユダヤ人とフォーク音楽との関係について、有意義な考察を進めることができた。さらに2019年3月には、おなじく来日中だったイディッシュ・コメディアンのShane Baker氏を招き、イディッシュ演劇の戦後から現在までの変遷をテーマに、研究成果報告会を催すことができた。 資料収集と視察については、2018年8月にシカゴでギリシア移民関係の資料を収集するとともに、ニューヨークのFolksbiene劇場でイディッシュ語版「屋根の上のヴァイオリン弾き」世界プレミア上演を視察し、劇場関係者に若干のヒアリングすることもできた。現地のリンカーン・センターにおいて、フォーク音楽関係の資料も集中的に調査した。 ギリシア音楽のレベティコについては、2019年の3月にアテネとテッサロニキで引き続き現地調査を実施し、レベティコの基本文献を収集した。 2018年度の収穫としては、アメリカのフォーク音楽の規範を定めた人物たちを、ある程度特定することができ、ギリシアからの移民やユダヤ人移民の音楽を、これら以外の新移民の音楽と比較する視座が得られたことが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、フォーク音楽の規範を定めた人物たちについて、ある程度特定することができたことの意義は大きい。これによってフォーク音楽をめぐる言説について、かなりの精度をもって見通しを付けることが可能になった。あとはその人物たちの活動を具体的に検討するという作業に、研究課題の方向を定めることができるようになった。 ギリシアからの移民やユダヤ人移民の音楽を、これら以外の新移民の音楽と比較するにあたっては、これらの音楽の研究史を具体的に辿っていくことも、手がかりになるということが明らかになった。 以上のように新移民の実際の音楽にせよ、これらの音楽やフォーク音楽をめぐる言説にせよ、本研究課題は目指すべき対象が相当に絞り込まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカのフォーク音楽の規範を定めた人物たちについて、時代的および思想的な背景を明らかにするとともに、ギリシアからの移民やユダヤ人移民の音楽を、これ以外の新移民の音楽と比較するための資料を読み込んでいく。 これらの調査と平行してギリシアの音楽レベティコについては、ミュンヘン大学教授Ioannis Zelepos氏による著書の翻訳が、2019年度内に完成できるように最終的な作業を進める。 今年は最終年度になるので、共同シンポジウムができるよう関係者と日程等を調整し、最終的な研究成果の執筆に入る。
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Causes of Carryover |
結果的に若干の未使用額が発生してしまった。これを翌年度の研究活動で使用する計画である。
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Remarks |
上記の研究集会は、本研究代表者が研究報告の一環として、海外の研究者・関係者と開催したものである。
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Research Products
(6 results)