2020 Fiscal Year Research-status Report
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16K02370
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
岸本 理恵 関西大学, 文学部, 准教授 (10583221)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 書誌学・文献学 / 古典籍 / 書写 / 兼輔集 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新型コロナ感染症の感染拡大防止のため、緊急事態宣言が二度発出され、研究の遂行には制約が大きくあった。所属する大学の図書館は休館となったほか、出張の実質的な停止、そうでなくても大阪は感染拡大地域であったため遠方への訪問は遠慮すべきと判断し、実見調査の計画を立てることは困難であった。また、新型コロナ感染症拡大防止のための急なオンライン授業への対応の他に、同僚の急逝によるゼミ生の受入れ等授業や校務分掌の負担増加もあり、行動・労力・時間ともに大きな制約を受け、研究の遂行は難しいものがあった。 そのような中ではあるが、2018年度の研究成果「藤原為家の私家集書写(承前)―唐紙本海人手子良集・後鳥羽院百首―」(『尾道市立大学芸術文化学部紀要』18)で扱った為家監督書写本の唐紙など装飾料紙本についての課題からの継続として、冷泉家時雨亭文庫に蔵され、冷泉家時雨亭叢書として影印本も刊行される典籍の調査をおこなった。その結果として、為家監督書写本そのものについてではないが、唐草装飾本私家集のうち『兼輔集』について注目した中から、『兼輔集』諸本については定説を整理し直す必要があることが判明した。問題は多岐にわたるため1つの論文にはまとめきれないので、1つの点をとりあげ先ずは「兼輔集諸本の再検討――西本願寺本の配列を起点として――」(『百舌鳥国文』30号)としてまとめた。『兼輔集』についての問題はまだ多くあるが、これを解明しつつ、為家監督本の装飾料紙を用いた写本についても、俊成や定家の監督書写本との大きな相違点として整理する必要がある。ただし、それを論文としてまとめるまでは至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の「研究実績の概要」に述べたとおり、緊急の対応や想定外の事態の発生が重なったので、行動・労力・時間ともに研究の遂行には大きな制約を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
兼輔集の諸本系統については問題点がまだまだ多いことが確認されたので、これについても継続して研究を続けるとともに、為家監督書写本についての考察に戻って為家の書写工房の実体像を明らかにしてまとめをおこなう。緊急事態が収束した際には、実見調査も積極的に実施したい。
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Causes of Carryover |
上記の「研究実績の概要」に述べたとおり、緊急の対応や想定外の事態の発生が重なったので、行動・労力・時間ともに研究の遂行には大きな制約を受けた。特に出張の自粛要請・停止によって旅費についてはほとんど使用できなかった。次年度は、緊急事態宣言などの制限が解除となれば、旅費の使用を計画している。また、研究の遅れを取り戻すべく、アルバイトを利用することで効率よく遂行したい。
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