2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of atelier of Fujiwara Tameie, and manuscripts transcribed by group led by Fujiwara Tameie
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16K02370
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
岸本 理恵 関西大学, 文学部, 教授 (10583221)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 書誌学 / 文献学 / 古典籍 / 藤原為家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、藤原為家の古典籍書写が、為家の監督のもと周辺の人々を動員しつつ集団で行なわれていた実態とその意義を明らかにすることを目的としている。伝承筆者を為家とする写本は多いが古筆の極は必ずしも現代的な価値観と共通するものではないので、どの写本を為家監督書写本と認定するのかをまず確定する必要があった。 前年度までの調査では、当初考えたような俊成・定家の監督書写本と同じ方法では難しく、為家監督書写本を認定していくことの困難さが改めて見えてきた。この問題を打開すべく、為家自筆の懐紙を軸に、『七社百首』『保延のころほひ』『続後撰和歌集』、さらには『大和物語』『寛平御時后宮歌合』『和歌初学抄』等を改めて比較検討した。その結果として整理の基準について新たな見地を得た。すなわち、真跡とされるものでも多様と言わざるをえない為家の筆にあっては、真跡か否かという二局的な追求はいったん置き、共通する特徴をより多く持つという点によってグループ分けし、さらにそれにグレードを付けて考える必要性である。書写年次の判明するものは年次とその時の為家の状況を重ねていくことも有効である。これにより写本の親疎や関連性を位置づけていけるものと思われる。 研究期間全体を通しては、為家監督書写本のうち素紙・枡形本や唐紙本それぞれの関係性について明らかにしたほか、いくつかの新出断簡を紹介することができた。ただし、上記の考えは研究期間の終盤に見出したので、個別の写本を分析した成果物としてまとめることはできなかった。今後これにしたがって写本群ごとに関係性を位置づけていくことでより為家監督書写本の実態を明らかにしていけるものと思われる。さらには、現在は為家監督書写本と認定されていない写本を多くの見出し認定していくことで、より具体的なものとして実態と意義を明らかにしていきたい。
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