2016 Fiscal Year Research-status Report
自筆資料調査および実地踏査による森敦文学の総合的研究
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16K02417
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
井上 明芳 國學院大學, 文学部, 准教授 (90614264)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 森敦 / 自筆原稿 / 翻刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画にしたがい、今年度は山形県庄内地方と森敦文学の関わりの研究に着手した。研究会を組織し、大学院生、学部生とともに研究を行った。これによって教育的な効果を得ることができた。 森敦文学と庄内地方との関わりのうち、庄内平野のほぼ全域を舞台にしているのが「われ逝くもののごとく」である。そのため、まずその初出となる雑誌連載の本文と完成版になる単行本本文の異同を精査した。その上で、初出の雑誌連載のために書かれた自筆原稿について翻刻を開始した。全部で400字詰め原稿用紙1,200枚余に及ぶため、連載(全36回)順に翻刻を進め、今年度すべての翻刻を終了できた。当初の計画では400枚程度を目指していたため、当初の計画を上回る成果となった。また、それをDTP処理をしてPDF等の電子媒体で公開できるよう、鋭意作業を進め、今年度は連載20回分程度を終了している。次年度も作業を継続する。 上記の内容をさらに多角的に検証するために、研究会で庄内地方の「われ逝くもののごとく」の舞台や実際に森敦が滞在した地を訪れた。森敦年譜と小説作品の表現とを実際の風景に照らしながら検証し、視覚的に表現を捉え得る資料として撮影を行い、想定以上の成果を得ることができた。 また、当初の計画にはなかったが、「われ逝くもののごとく」の異同や翻刻、実地踏査の成果が得られたため、それらを公開するために2016年12月17日、國學院大學にて研究会を開催した。その際、中村三春北海道大学大学院教授、黒田大河滋賀大学准教授を招き、研究発表ならびにシンポジウムを行い、多角的な研究視点を得ることができた。その後森富子氏にご講演をいただき、森敦の人となりを伺うことができた。また、同時に研究会所属の学生たちによるアクティブ・ラーニングを行い、3D地図やポスターなどを用いて、研究成果を発表し、来場者から貴重な助言をうけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の計画では、森敦「われ逝くもののごとく」の初出本文と単行本本文の異同の精査と自筆原稿1,200枚余あるうち、翻刻を400枚程度行う予定であったが、そのすべてを終了することができた。また、庄内地方の森敦関係の地の実地踏査も、想定していた以上に成果が得られた。むろん、まだまだ調査すべき内容は多々あるが、それらを明らかにすることができた点も成果であった。 以上から、一定の成果が得られたと判断されたため、当初今年度は行う予定のなかった研究成果報告を含めた研究会を開催することができた。その際研究実績の概要で述べた通り、森富子氏をはじめ、中村三春先生、黒田大河先生をお招きし、講演、研究発表、シンポジウムを行うことができた。同時に、研究会所属の学生たちの努力によって、アクティブ・ラーニングを行うこともでき、上記で得られた研究成果の公開も可能となった。実地踏査で得られた成果を表現するために、3D地図も作成し、立体的に成果を公開でき、森敦研究の可能性の一つを示すことができたと考える。 研究会については、以下のURLで告知した。 https://www.kokugakuin.ac.jp/event/17376 また、その内容については、以下のURLに紹介されている。 http://pr.kokugakuin.ac.jp/event_extramural/2016/12/17/182122/
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き研究会を組織し、昨年度からの自筆原稿翻刻のDTP作業を継続する。さらに「われ逝くもののごとく」の単行本に至る書き換えなどの資料の翻刻を行い、生成過程を明らかにすることを目指す。 また、庄内地方の実地踏査も行い、昨年度明らかになった調査すべき地や人物などについて明らかにする。そのためには森敦を実際に知る当地の方々への聞き取りなども行う予定である。さらに、昨年度行った研究会での成果報告の際に得られた公開の手法の反省点などを踏まえて、撮影などについてさらに挑戦的な方法を試みて、森敦文学研究の可能性を開いていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画よりも進捗状況が進展したため、研究会を開催したが、概ね計画通りの使用となっている。謝金等の改定がおこなわれたため、見積もり等により差額が生じ、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の使用計画としては、研究を鋭意進めるべく謝金に充てる予定である。
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Remarks |
(1)は本研究における研究会開催の告知および内容である。(2)はその内容についての取材報告である。
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Research Products
(3 results)