2019 Fiscal Year Annual Research Report
Evolving research on Makuami work: updating basic materials and reconstructing the theory of drama
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16K02424
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
吉田 弥生 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (00389876)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近世文学 / 歌舞伎 / 芸能 / 黙阿弥 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度においては、黙阿弥作品の現行上演について捉え、また作品の初演時の様相を新たなかたちで情報公開するための研究活動が主となった。 「平成の歌舞伎史―喪失・再生・模索の三十年―」(令和元年7月、歌舞伎学会『歌舞伎 研究と批評』)では、平成初期における三代目市川猿之助(現・猿翁)が創造する澤瀉屋型の芸が黙阿弥と提携した役者の四代目市川小團次の系をひくことを挙げ、近代以降に失われたケレン等の芸の具現化と、その先にスーパー歌舞伎の誕生もあったことに言及した。 「黙阿弥と講談」(令和元年9月、演劇出版社『演劇界』)では、平成29年度の研究計画にしていた黙阿弥と、その素材として利用した講談との関係を見直し、黙阿弥と講談を結び付けた人物・細木香以について、七代目市川團十郎の『勧進帳』制作現場と講談およびのちに合巻の脚色で関係を深める柳下亭種員とがすべて結びつくこと、提携関係を築いた四代目小團次と講釈師・二代目松林亭伯円と白浪物とのつながり、明治期に入ってなお講談脚色作品が増加した傾向、同じ講談から幾度も脚色を繰り返す傾向等について新たな見解を加えつつ、まとめ述べることができた。 『新累女千種花嫁』(令和2年1月、日本芸術文化振興会国立劇場調査養成部)は「正本写合巻集」の第二期25巻として刊行した。内容は慶應3年(1867)7月に江戸の版元・蔦屋吉蔵より版行された合巻『新累女千種花嫁』の影印(東京大学総合図書館所蔵)と翻刻(東大本のほかに早稲田大学演劇博物館所蔵本を底本)のほか、上演を描いた錦絵・番付の同時代資料を掲載し、解題を付したものである。当該合巻(正本写)は黙阿弥作品の初演を合巻のかたちで再録したものであり、その構造を明確に伝える資料を情報公開できる機会に恵まれ、将来的な復活上演へのアプローチの一端となれば研究成果の社会還元として理想的な展開が得られると期待するところである。
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