2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Literary Representation of Women's Labour and the Formation of Their Network in the Late Nineteenth and Early Twentieth Centuries
Project/Area Number |
16K02441
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
市川 千恵子 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (10372822)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マーガレット・ハークネス / エリザベス・ギャスケル / 女性労働 / ストライキ / オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、ハークネスの労働表象を国内と国外の2つの視座から考察した。まず、国内の労働をめぐっては、7月にThe Literary London Societyから研究発表の招待を受け、大会の中心テーマとなる共同体という概念を本研究課題の女性労働表象とネットワーク形成を連携させ、エリザベス・ギャスケルが19世紀中葉の産業小説のなかで描く家父長的共同体とハークネスのポスト産業小説における19世紀末の都市の理想と現実の乖離を考察した。その際に、両作家による女性身体と声の提示の様相に注目した。ハークネスの語りに、19世紀中葉の産業小説から継承された中流階級的視点が潜在することは否めない。だが、家父長的な枠組みから社会の精神的連帯を希求しながらも、19世紀末の都市の貧困の苛酷な現実を突きつけ、チャリティへの不信や、社会主義への傾倒と失望を示唆するハークネスが描く理想と現実は、まさしく混迷する時代を映し出す。同時に、周縁的な女性労働者をめぐる描写には、新たな声の模索が示され、演劇的効果を生む女性の群れは、抵抗の言葉をその身体に刻む。現在、本研究発表に加筆修正を施した英語論文は、国際学術雑誌において査読中である。次に、アメリカの19世紀歴史研究者より依頼を受け、オタゴ大学で9月に開催された国際学会において19世紀末のセクシュアリティに関する研究発表を行った。この発表の一部において、ハークネスの労働者階級女性の経済・身体的脆弱さを検証した結果、彼女のオーストラリアにおける移民労働調査活動の分析も必要であることがわかり、移民企画と労働争議に関する論説を読む作業を行った。この分析をGeorge Eastmont: Wanderer (1905) の主人公のオーストラリア体験のみならず、ディケンズ、ハーディ、ギッシングらの19世紀リアリズム小説での帰国者表象の検証へと結びつけ、論考を深めることが今後の課題である。
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Research Products
(3 results)