2016 Fiscal Year Research-status Report
文学作品のメディア間翻訳とデジタル・ファンダムによる創造と消費に関する研究
Project/Area Number |
16K02463
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
南 隆太 東京経済大学, コミュニケーション学部, 教授 (60247575)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シェイクスピア / マンガ / アニメ / 翻案 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はシェイクスピアを中心とする文学作品が、映画をはじめ、アニメやマンガ、インターネット上あるいはコンピュータゲーム等のプラットフォーム上で二次創作をはじめとしてどのように利用され再創造されているのかを、その消費者であるファンの集合体(ファンダム)の視点から検討しようとするものである。1年目は、(1)国内外における研究協力ネットワークの確立、(2)研究プロジェクトの周知、(3)研究の基礎となる資料および設備の拡充の3点を中心に行うことを主な目的とした。 (1)と(2)については、英国の研究協力者Ronan Paterson(Teesside University, UK.)が主催する国際学会Shakespeare the Next 400 years(4月)およびWorld Shakespeare Congress(7-8月)、さらにAsian Shakespeare Association (12月)においてセミナーの企画と研究発表、研究協力者による発表・ワークショップを通して研究を進めることができた。特に、World Shakespeare Congressでは、研究協力者であるリチャード・バート(Richard Burt) フロリダ大学教授とともに、セミナーShakespeares Tattered and Re-imagined in Manga/Comics, Animation and World Cinemaの座長として企画し、イギリスの若手研究者Megan HolmanやDouglas Lanierニューハンプシャー大学教授をはじめ多くの研究者と意見交換を行い、今後の研究協力体制の基礎を作ることができた。また学会発表以外に論文も発表し、ポピュラー・カルチャーにおけるシェイクスピアをはじめとする文学作品のメディア間翻訳について基盤的な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度においては、(1)国内における研究ネットワークの確立(2)研究プロジェクトの周知(3)研究の基礎となる資料の拡充、の3点を中心に研究を遂行する予定であった。(1)と(2)については、3つの国際学会への参加、セミナー、パネルディスカッションの企画運営、さらには国内研究協力者による研究発表の招聘などを通して、概ね計画通りに達成ができたと考えている。また、雑誌論文に研究課題に関する論文が掲載されるなど、ある程度の成果を上げたものと考えているが、(3)の研究の基盤的資料の拡充については、国際学会への参加のために本研究助成の予算が不足してしまったが、可能な範囲で個人研究費等により資料収集を行い、研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
シェイクスピアを中心とする文学作品のデジタルメディアにおける翻案とテクストの流通にはファンダムが重要な役割を果たしているケースがアメリカなどに多くみられるが、日本をはじめアジアでは少し異なることが明らかになる一方で、さまざまなゲームにおいてシェイクスピアや文学テクストが断片化されてゲームのファンのコミュニティの中で再生産されることが分かり始めたため、今後はゲームとそのファンコミュニティにおける文学テキストの断片化(キャラクターの空洞化)とメディア越境的な移動に注目をして、一層研究を行う予定である。その際、特に注目すべきは、アジアにおけるJ-Popカルチャーの消費と領有およびコモディティ化とビジネスモデルの形成であり、今後はアニメやマンガのアジアへの展開戦略とそのテクストにみられる文学作品の変容に注目をする。そのために、国際研究集会などを行いながら、アジアの実作者やプロデューサー等への聞き取り調査も実施したい。
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