2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02466
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
本橋 哲也 東京経済大学, コミュニケーション学部, 教授 (20230047)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カニバリズム / 世界文学 / 演劇表象 / ディスコース研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
「世界文学におけるカニバリズム言説の研究」という研究課題に即して、初年度である2016年度は、重要な先行文献の一つであるレベッカ・ウィーバー=ハイタワー著『帝国の島々――漂着者、食人種、征服幻想』の翻訳を中核として、検討すべき第一次文献と第二次文献の選考を行いました。『帝国の島々』については、その内容を要約した訳者解題つきの「序章」の翻訳を、『東京経済大学人文自然科学論集』139号に掲載しました。本書全体の翻訳は、法政大学出版局から2017年度中に出版の予定です。 そのほかに、国内国外への研究調査旅行を数回行い、国際学会での研究発表とともに、カニバリズムや他者表象に関わる演劇作品の鑑賞と研究、関係者へのインタビュー、基礎文献の収集等を行いました。その成果は2017年度中に発表予定の論文に盛り込まれる予定です。 この研究主題が対象とすべき第一次文献や芸術分野における表象は、きわめて多岐にわたるため、それらを単なる紹介に留まらず、テクストの精読を通して、カニバリズムという現象、およびそれを政治的・文化的効果として発動させる言説のメカニズムを研究するためには、具体的に精読を行う研究対象の限定的な選考が重要になります。その意味でも、『帝国の島々』をはじめとする重要な先行二次文献を検討し、翻訳を進めてきたことはたいへん意義のある研究成果をもたらしていると思いますので、その翻訳書の完成を急ぎたいと考えます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「世界文学におけるカニバリズム言説」という研究課題の研究初年度である2016年度は、先行文献の精査や、基礎的な一時文献の選考にあてる予定でしたので、その点ではおおむね順調に研究を進めることができました。 またとくに演劇作品を中心とするカニバリズムに関わる表象の調査研究においても、数回の研究調査旅行において成果を収めることが出来ましたので、その点でもほぼ順調な進行状況にあると思われます。
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Strategy for Future Research Activity |
「世界文学におけるカニバリズム言説の研究」という研究課題は、対象とすべき文献や芸術表象がきわめて多岐に及ぶため、3年間という限定された期間において、当初目的とした成果を収めるためには、研究対象を絞って研究を進める必要があります。とくに「言説研究」を主たる目的としていますので、研究対象となるテクストの精読が必須となり、単なる紹介ではなく、カニバリズムという現象がどのような心理的、社会的、政治的文脈のなかで「言説」としていかなる効果を持っているのか、という文化の力学から考える肌理の細かい研究が求められますから、その意味でも、精読すべき文献や芸術表象の選択には注意を注いでまいりました。 二年度目となる2017年度は、初年度においてそのように選考された文献や芸術表象を具体的に研究する段階に入り、精読と研究調査を進めていきます。
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Research Products
(4 results)