2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02478
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| Research Institution | Nihon University |
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Principal Investigator |
古河 美喜子 日本大学, 工学部, 助教 (80462125)
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2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | Herrick(1591-1674) / Hesperides / 17世紀イギリス詩 / 政治的機能 / 王党派的詩想 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで科学研究費補助金に採択され行われてきた研究課題「ロバート・へリックの理想郷と動乱のイギリス社会」（若手研究(B)平成20～21年度）、「ロバート・へリックの田園世界―『ヘスペリディーズ』の抒情性と社会性―」（若手研究(B)平成22～23年度）及び「ロバート・へリックの抒情詩における社会性と政治的機能」（基盤研究(C)平成24～27年度、期間延長申請により一年間延長）の三つの課題から得られた成果をもとに、17世紀イングランドの王党派詩人ロバート・へリック（Robert Herrick, 1591-1674）の抒情詩集『ヘスペリディーズ』（Hesperides, 1648）が持つ抒情性と社会性の融合、またそれらの一見相反する性質の併存状況がもたらす政治的機能等から作品に流れる王党派の詩想について明らかにすることを目的とするものである。
平成29年度は、研究の軸として掲げてきた「田園生活に隠された政治性」と「博物学・民俗学的興味に隠された政治性」という二つの柱を念頭に、これまで積み重ねてきたロバート・へリック研究の中で一貫して掲げてきた作品が密かに抱えている政治性というテーマ、初期近代英文学史におけるこの詩人の位置付けと共に作品に流れる王党派的思想について、前年度（平成28年度）の成果も踏まえ、設定していた小テーマの改訂・削除・修正作業と整理を行い、集約して、以下の出版物として纏めた。
図書（1件）『聖なる俗歌―ロバート・ヘリックの王党派的思想―』、金星堂、2018年、227頁、単著
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度（平成28年度）の成果である日本比較文学会2016年度東北大会におけるワークショップの企画立案と、司会・コーディネーターとしての役割や、また『比較文化研究』掲載の論文執筆を通じて、本研究課題における取り組みが活性化され、当初予定していた小テーマの纏め、更には全体を見据える作業を計画以上に推し進めることができた。
ヘリックの場合、一見相反するように見える「抒情性」と政治的言説を含む「社会性」は言論統制・検閲といった当時の時代背景や「詩」というジャンルが持つ隠喩・婉曲表現といった特殊性から実は分ち難く結びついており、作品の中でそれぞれの価値を損なうことなく併存している。詩的言語による効果が、詩の抒情的な価値を保ちながら社会的で政治的な意味づけをなしている。またヘリックが生来の気質として備えている民俗学的また広範な意味での博物学的な志向やそこから広がる独自の世界観が、17世紀中葉の動乱の時代にあってはピューリタン社会に対する批判の眼差しに自然な形で繋がってゆくという主張を展開し、詩集における「聖なる部分と俗なる部分の二重性」に着目することで、従来のへリック研究に王党派の政治的詩想を見出し、作品に新たな視点を与えることができたと考えている。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、今年度（平成29年度）出版物として纏めた本研究課題の成果を、所属学会（十七世紀英文学会、日本比較文学会、日本比較文化学会、日本英文学会東北支部等）における口頭発表等の形で公開してゆく予定である。そして、研究発表を通じ、他の研究者からの助言等を参考にしながら、情報収集を進める。またその上で、資料の収集・整理・分類等、基礎研究を重ねてゆきたい。
更に、へリック詩集の思想的源泉を探るための分析にも繋がるであろう代表作「乙女たちに 時間を大事にするように」(‘To the Virgins, to make much of Time’)のモチーフ、古代ギリシャ・ローマの思想「今日を楽しめ」（“carpe diem”）とへリックのホラティウスを中心とした古典文学からの影響、アダプテーション（翻案）の問題、短詩形を得意とした詩人のsong-writerとしての音楽的素養、日本で大正期に流行した「ゴンドラの唄」の歌詞と「今日を楽しめ」の主題との関連を手がかりとした日本との関わり及びへリック詩の日本における受容等、研究対象の幅を広げて研究の促進と深化・発展に努め、今後の研究課題に繋がる準備活動にも充てたいと考えている。
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| Causes of Carryover |
購入手配が間に合わなかった初期近代イングランド文学関連の学術書・文献の購入に、次年度使用額を充てる予定である。
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