2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Impact of the Non-Europeans in Enlightenment Literature
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16K02525
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 研一 東北大学, 国際文化研究科, 名誉教授 (80170744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 緑 東北大学, 国際文化研究科, 名誉教授 (10219024)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 啓蒙 / 黒人奴隷 / ヘルダー / 植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヘルダー作五篇連作詩「黒人牧歌」(『人間性促進のための書簡』(1793/95)所収)について考察を進めるとともに、当連作詩関係の文献調査を実施した。 夏期休暇中、ライプチッヒ大学図書館では、啓蒙期ドイツの「黒人奴隷もの」関連の文献調査を行った。また、ゲラートとヘルダーに関する意見交換をゲラート文学館館長とする機会を得て、ヘルダーの文学が、ゲラートらにより培われた啓蒙の土壌にも根差すことについて知見を深めた。 さらに、オーストリア国立図書館にて、「黒人牧歌」の成立に結びつくと考えられる旅行記や宣教師報告書等を調査した。それらは、クレーヴクール作『アメリカ農夫の書簡』(1789)、ヘルンフート兄弟団伝道者オルデンドルプによる実体験に基づく『カリブ海諸島史』(1777)、あるいはステッドマン作『スリナム黒人反乱鎮圧記』(1796)の初版原書(英語版)(同時に、1797年初版ドイツ語翻訳書)である。なかでもオルデンドルプとステッドマンによる稀覯本の黒人奴隷に対する白人の過酷な罰や処刑に関する記述を読み、非ヨーロッパに対するヘルダーの姿勢を考察するための土台作りとなった。 秋以降、「黒人牧歌」が直接依拠したと考えられるコルプ編『黒人奴隷の風習や運命』(1789)を読み解いて、相互を比較考定し、黒人奴隷および植民地制度に対するヘルダーの考えに分析を加えた。さらに、法政大学文学部ドイツ啓蒙研究者と討議を交わして、ヘルダーと「ヨーロッパ中心主義」との関係に関する問題を検討した。 また、ラシュトン作『西インド諸島牧歌』の描く黒人奴隷の過酷な生活や無慈悲な農園主、奴隷反乱に関する考察を通して、「黒人牧歌」の理解をいっそう深め得た。
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