2022 Fiscal Year Annual Research Report
Emile Zola and the Human Rights League of France
Project/Area Number |
16K02527
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 寅彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30554456)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エミール・ゾラ / 人権同盟 / オペラ / アルフレッド・ブリュノ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度のゾラと人権同盟にかかわる研究は、とりわけアルフレッド・ブリュノに焦点を当てることとなった。ゾラの死後に人権同盟が「エミール・ゾラの友の会」を結成するが、この中でもっとも重要な役割を担った人物の一人が友の会の副会長であったブリュノであったからである。ゾラがリヴレ(台本)を執筆し、ブリュノが作曲した歌劇『メシドール』については、散文で書かれたことへの批判、ブリュノの作曲へのゾラの「介入」、労働を中心とする理想的共同体形成が従来の研究(Jean-Sebastien Macke、Jean-Max Guieu、田中琢三、林信蔵、等々)で指摘されている。本研究では、ブリュノの友人であったエチエンヌ・デトランジュ(Etienne Destranges)にかかわる資料を用いることで、従来の指摘を補強し、かつ『メシドール』がデトランジュの住むナントのような地方都市で具体的にどのように受容されたかを、美学的観点からも社会的観点からも検討することができた。本研究は、2022年11月26日に日仏会館で開催されたシンポジウム「総合芸術としてのパリ・オペラ座-建築、美術、オペラ、バレエ、文学の交差-」において「エミール・ゾラとオペラの舞台」と題して発表された。さらに、研究活動で得られた学術交流から、ソルボンヌ・ヌーヴェル大学のエレオノール・ルヴェルジィによる講演会「ゾラのルーゴン・マッカール叢書における鏡―記憶と真実の間」を実現し(2022年11月21日、東京大学総合文化研究科)、ゾラの文学作品と第三共和政的な鏡の表象の役割にかかわる知見を深めることができた。研究期間全体に得られた成果は、人権同盟がゾラの死後に、ゾラ称揚の活動を行うなかで、「巡礼」に象徴されるような「殉教者」としてのイベントを行い、その「聖別」を背景としたゾラの作品擁護が行われていたことが明らかになったことである。以上
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