2017 Fiscal Year Research-status Report
フランス19世紀前半の文学・芸術における地方色と異国性
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16K02529
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
博多 かおる 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60368446)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地方性 / 異国性 / 境界 / 異国趣味 / バスク地方 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、地方性、異国性、境界の概念を多角的に検討するために、バルザック、メリメ、ジョルジュ・サンド、ネルヴァルらの作品を読み解くとともに、パリのバルザック記念館資料室、フランス国立図書館、ポンピドゥーセンター図書館等においてこれらの概念について調査を進めた。その中で特に、ヴィクトル・ユゴーの作品における境界の問題に注目するに至り、旅行記における国境や海岸の記述を調べ、幼少時の記憶と結びつく点で重要なバスク地方についての作家の考察を分析した。また、当時のバスク地方の状況を把握するためにビアリッツ歴史博物館で資料調査を行い、ピエール・ラボルドによる『バスク海岸旅行の歴史』や、ユゴーの旅行記に関連する画像資料などを参照することができた。他方、ドラクロワら19世紀の画家の作品にあらわれた色彩と異国性の問題について調査を行うとともに、テオフィル・ゴーチエらの幻想小説における色彩と境界の問題を考察した。そこには、異なる空間に踏み込む認識に先立つ色彩の変化が、時間の流れの変化とも関連する形で描きこまれていることが理解された。さらに、「異国」を主題とした19世紀のオペラの分析に着手した。マイアベーアがパリのオペラ座での上演を念頭に作曲したグランド・オペラ『アフリカの女』を、19世紀のやはり異国を舞台とするオペラ(ビゼー作曲『真珠とりの女』、マスネ作曲『タイス』、ドリーヴ作曲『ラクメ』)などと比較しながら分析した。『アフリカの女』は1865年初演ではあるが、世紀前半に流行し始めたグランド・オペラの要素の一つである異国趣味をいかに世紀後半のオペラのそれへとつないだかという点で興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
それぞれの項目につき、特にフランスの資料館や図書館にて有意義な資料調査や分析を行うことができた。資料調査の中で特に掘り下げるに値すると思われた主題を集中的に掘り下げたため、予定していたユゴーの『東方詩集』における異国性など一部の主題は本年度取り上げることができなかったが、次年度に取り扱いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った文学、絵画、音楽における異国性と地方性、境界に関する研究を展開するために必要な資料調査を行い、次年度には発表可能な部分を論文等の成果にまとめる。分析が必要となってくるであろう当時の音楽作品の中には現在演奏されていないものも多いため、フランス国立図書館などに残された楽譜・録音資料を調べることも必要となる。
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