2018 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視点から見た19世紀フランス文学と造形芸術の相関性
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16K02542
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
村田 京子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60229987)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 19世紀フランス文学 / ジェンダー / 絵画 / モード / フランス革命 / 演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的1「19世紀フランス文学と造形芸術の相関性を、小説構造や小説美学と関連づけて考察・分析する」に関して:フランス革命末期のブルターニュ地方で起こった反革命運動を題材とするバルザックの『ふくろう党』を取り上げ、この小説を革命の歴史を絡めながら、登場人物の服装の描写に焦点を当て、当時のモード誌の図版や絵画を参照しながら分析した。服装を手掛かりに、ジェンダーの視点から小説を読み解くことで、新しい視点が得られた。 研究目的2「女性作家の描く人物像に焦点を当て、男性作家とは異なる点を明らかにする」に関して:フランス語学フランス文学会のワークショップ「女性作家と文学場のジェンダー」で口頭発表し、それをもとにした論文「女性作家と「捨てられた女」のテーマ」において、絵画(ダヴィッド、グロ、ドーミエ、モロー)と絡めながら、古代ギリシアの女性詩人サッフォーに遡る「捨てられた女」のテーマに焦点を当て、17世紀の『ポルトガル文』、19世紀のバルザックの作品(『捨てられた女』など)と、スタール夫人の『デルフィーヌ』『コリンヌ』、ジョルジュ・サンドの『ラヴィニア』『メテラ』など女性作家の作品を比較対照した。それによって、男性作家が作り出した「捨てられた女」像をスタール夫人やサンドがいかに新しい女性性の表象に作り替え、女主人公を女性作家の代弁者にしたか、明らかにした。 さらに、19世紀ロマン主義演劇を代表する女優マリー・ドルヴァルとジョルジュ・サンドの関係を探り、サンドの理想の女優像を明らかにした。ドルヴァルを描いた図版を多数用いることで分析が深まった。その他に、昨年、国際シンポジウムで発表した論文(La table des courtisanes dans La Comedie humaine)が国際的なバルザック研究誌 L'Annee balzacienne 2018に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の研究目的「19世紀フランス文学と造形芸術の相関性を、小説構造や小説美学、作家の芸術論と密接に関連させて考察・分析する」および、「女性作家の描く人物像に焦点を当て、男性作家とは異なる点を明らかにする」に関して、上記のようにスタール夫人、バルザック、ジョルジュ・サンドなど19世紀フランス文学を取り上げて、研究目的に沿う形て作品分析をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴンクール兄弟の芸術家小説『マネット・サロモン』を取り上げ、画家とモデルの関係をジェンダーの視点から分析する。画家とモデルの関係に関しては、バルザックの『知られざる傑作』、ゾラの『制作』とも比較対照していきたい。 今年は本研究最終年度に当たるため、今までの研究成果をもとにして、学術書にまとめる予定である。 また、上記に言及した、マリー・ドルヴァルと関係づけながら、サンドの理想の女優像を探る論文をもとに、2019年6月にスイスで開催予定のジョルジュ・サンド国際シンポジウムにおいて、フランス語での研究発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2019年6月23日~29日までスイスのベルン、ローザンヌで開催されるジョルジュ・サンド国際シンポジウムに参加予定で、その旅費に使うため。 本研究のこれまでの研究成果をもとにして学術書を出版の予定で、その出版費用の一部にあてるため。
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Research Products
(10 results)