2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Imagology in 19th-century French literature
Project/Area Number |
16K02546
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
畑 浩一郎 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (20514574)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フランス文学 / 19世紀 / イマゴロジー / 旅行記 / オリエント / ロマン主義 / シャトーブリアン / ギリシア独立戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究最終年となる2018年度は、これまでの研究で得られた知見を統括すると同時に、とりわけ1820年代におけるシャトーブリアンとギリシア独立戦争との関わりを集中的に考察した。具体的には、フランス本国でもこれまでほとんど論じられて来ていない「ギリシアに関するノート」というテクストを緻密に分析することで、作家がどのようにして、当時の親ギリシア主義ートルコからの独立を目指すギリシアを支援しようとヨーロッパでわき起こった運動ーの潮流を盛り上げたのかという問題を明らかにした。かつて『キリスト教精髄』というベストセラーを生み出した作家としては、当然、キリスト教徒としての紐帯は重要なものとなる。だがシャトーブリアンの主張はそれだけにとどまらず、地中海東部の政治情勢についての極めて精緻な知識に基づいた、現実的な外交分析にまで及んでいる。作家の主張を読み解くことによって、文学と政治の間に結ばれる強い関連性を確認することができた。 さらにこの「ギリシアに関するノート」を、その十五年前に書かれたオリエント旅行記『パリからエルサレムへの旅程』と比較することで、極めて興味深い知見を得られた。一般にシャトーブリアンは、ヨーロッパにおける親ギリシア主義の旗手の一人と見なされている。だが、かつて実際にエルサレム巡礼の旅の途中、ペロポネソス半島を横断した作家は、そこに輝かしい古代ギリシア文明を辱めるような、みじめな近代ギリシア人の姿しか見いだすことができない。旅行記の中での、作家のギリシア人観はそれゆえかなり手厳しい。作家のこのような見方は決して彼特有のものではなく、実はルネサンス時代にまで遡る「ギリシア人嫌い」の伝統に与するものでもある。つまりシャトーブリアンの近代ギリシア人観は最初から固定されていたわけではなく、十五年の間にほぼ百八十度の方向転換が行われたのである。
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Research Products
(4 results)