2019 Fiscal Year Annual Research Report
Metaphysik des Wortes - Kulturgeschichtliche Untersuchung des Romans "Der Tod des Vergil" von Hermann Broch
Project/Area Number |
16K02562
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
桑原 聡 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (10168346)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヘルマン・ブロッホ / コトバの形而上学 / ユダヤ神秘主義 / 真言宗 / ピタゴラス / オルペウス / 天球の音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において,ヘルマン・ブロッホの小説『ウェルギリウスの死』において主題となっている「コトバの形而上学」を文化史的に明らかにすることを目的としてきた。2018年にオーストリアのアスコナでヘルマン・ブロッホシンポジウムが開催され、研究代表は、「ヘルマン・ブロッホのコトバの形而上学」と題して招待講演を行った。その後2020年にドイツWallstein出版社からこのシンポジウムの成果が出版されることになった。研究代表の論文も掲載されることとなった。講演草稿を論文に仕上げるために,研究期間を一年延長し,引用文献の本文校合など細部を詰める作業を行った。シンポジウムの成果はWallstein-Verlagから"Aussteiger um 1900"と題されて2020年に発刊されることが決まった。 ヘルマン・ブロッホの考える「コトバ」とはわれわれが日常使用している言葉とは根本的に異なり、「コトバ」はユダヤ神秘主義における「エン・ソーフ」en sofに相当するものである。すなわちブロッホにあってはすべての事物の根源、神として考えられている。ブロッホはコトバの神聖・真性が忘却されたことが20世紀前半の混乱を引き起こしたと考えている。『ウェルギリウスの死』は読者にそのことを想起させるために書かれたと言っても過言ではない。彼によればコトバの記憶の残滓は詩人の「歌」に秘められているという。その「歌」を再び聞く耳を持つことが世界の再生につながるという。一見荒唐無稽に聞こえるブロッホの主張は,しかしながら,ユダヤ神秘主義,空海の真言宗などとも相通ずる普遍性を有している。人間の言葉はそもそも神的な根源をもっているにもかかわらず,忘却されていると考える。 人間の世界にあってこの神にあたるものをブロッホは人間の尊厳と人権を保障する「国際連盟」に求めた。「コトバ」と国際連盟の並行関係を本年度明らかにした。
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