2019 Fiscal Year Annual Research Report
The 20th Century Spanish Novel and Social Crisis: Intersection between Literature and Sociology in F. Ayala's Works
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16K02570
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
丸田 千花子 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 准教授 (00548414)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スペイン文学 / 小説 / 亡命知識人 / 文学と社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は研究成果論文2件を発表した。まず1件目は平成31年度の研究成果の英語論文であり、最終年度の6月に出版された。2件目は米国において研究資料の収集と整理を行った結果の研究成果を英語論文として紀要から出版した。 最終年度は2つの研究を行った。①平成30年度の研究成果から発展したものである。小説『コップの底』(1962)では第2章が新聞記事から構成されており、小説の主要な事件の真相が明らかになる。新聞記事を用いた手法による効果と意義を明らかにするため、テクスト考察と同時に、1940年代以降1990年代までにアヤラが発表したジャーナリズムや世論に関する著作を分析した。アヤラは、新聞をはじめとするジャーナリズムが世論形成に果たす役割、そして民主主義社会との関係について、社会学の著作で論じ続けた。そしてその知見を『コップの底』の創作に反映させ、ジャーナリズムの有用性と限界を小説という場で提示した。②研究実施計画に従って1960年代の2つの著作『環大西洋岸の2つの世界』(1963)と『今日のスペイン』(1965)の精読を行った。これらの著作でアヤラは母国および亡命先の社会の現状と問題点を指摘し、アメリカ大陸に亡命後の20年間で得た知見を通して、イスパニスモ(スペイン語圏文化)は何かという問いに答えようとしていることがわかった。しかしながら最終年度ではこれらの著作と小説との関係性について考察し、研究成果を発表するまでに至らなかった。今後この研究成果発表に向けて努めたい。 従来、アヤラ研究者、またスペインの亡命知識人研究者の間で取り上げられなかった点を本研究課題で指摘することができたことは大きな成果である。また本研究の成果は、英語やスペイン語で行い、オープンアクセスの紀要英語論文で発表した。国内外のスペイン文学や他分野の研究者にも発信できたことは意義があると思われる。
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