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2018 Fiscal Year Research-status Report

リルケとオカルティズム

Research Project

Project/Area Number 16K02573
Research InstitutionTokyo Medical University

Principal Investigator

城 眞一  東京医科大学, その他部局等, 名誉教授 (60424602)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords自動筆記 / 詩作 / 口授 / J.ベーメ / リルケ
Outline of Annual Research Achievements

今年度には、作業仮説の一つに予期せざる疑義が生じたため、研究は迂回または部分的に後退を強いられた。しかしこの負の発見も、丁寧に処理すれば、研究成果をいっそう豊かにする可能性があるので、慎重に作業を進めた。
リルケのオカルト主義の大きな特徴として、第二年度の研究は次のことを報告していた、― 詩論の中に降霊術が半ば取り込まれていること、しかしそこには醒めた詩作の演出家と何らかの超越的な声を聴き発語する霊媒の両者が分裂的に併存すること、それがモデルネの詩人リルケの宿命である、と。しかしここには一つの隠された仮説が、暗黙裏に存在する。それは、モデルネ以前には、西欧近代の草創期であれ、中世であれ、古代であれ、完璧なスピリティズム(降霊術)が 存在した、という仮説である。ところがこの仮説はこれまでの多くのこの立場を肯定する論者によって了解されたに過ぎず、未だ検証されていないことが、判明した。
そもそも、完璧な忘我の自動筆記なるものが典型として存立しうるのかという疑問が発生したとしても、不思議ではない。「仮説の検証」が必要となり、その検証の方法として、J.ベーメの『神智学的回状』における「書くこと」についての弁明箇所を選び、上記の分裂的併存の実態を探求した。また、ドイツ語の詩作dichtenと口授diktierenの語源とドイツ語史における用法の変遷を追跡した。ここで獲得された知見については、さらに煮詰めて発表する予定である。
対外的な研究活動としては、川島隆代表の科研プロジェクト第三次「プラハとダブリン」の招聘行事に協力し、ヴァイマル音楽大学のProf.Steffen Hoehne(シュテフェン・ヘーネ教授), 『カフカ批判版全集』編集者Prof.Hans-Gerd Koch(ハンス-ゲルト・コッホ教授)らと有益な意見交換をした。
その他、編纂中の事典のリルケ関係の二項目を担当した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

上述の作業仮説の妥当性について再考する必要が生じ、多くの時間を「仮説の検証」に充てたため。
くわえて予期せざる健康上の理由により、研究ペースをいままでの半分に低下させざるをえなくなったため。

Strategy for Future Research Activity

上記の「仮説の検証」が終わり次第、本来のリルケ論に戻る予定である。すなわちリルケにおける詩作の構造を、自動筆記の理論から解明することが最大の目標である。このことによって、自我の概念の自明性すなわち書くことをはじめとする言語活動一般の自明性が、揺らぎ、再定義を余儀なくされる場合もありうる。このことは、これまで欠落していた西欧近代のある種の反省的意識を補完する意味を持つ。
研究の過程で発生した多様な紆余曲折をも含めて、2019年度中には、すくなくともこれまでの研究の暫定的な記録を残しておきたい。
また、健康上の理由から、マールバハ文学アルヒーフ滞在は断念するが、当初、予定していた代替措置を今年度も採る予定である。
対外的には、科研「プラハとダブリン」第三次プロジェクト(2016~2018年度)に続いて、第四次「プラハとダブリン」の立ち上げに協力する予定である。一連のプロジェクトの発案者として、行く末を見守ると同時に、つねに若手からあらたな刺激を受けつつ、互いに成果をより普遍的なものとしたい。

Causes of Carryover

作業仮説を検証するため、J.ベーメにおける口授の実態を調査する必要が生じた。このため予定外のテクストの読解に多くの時間を費やし、旅費を使用する機会がほとんどなかった。ここから次年度使用額が発生した。
くわえて健康上の理由から、研究のペースを低減させる必要が生じたため、その低減分が予算使用に反映したと考えられる。
前者の理由は、本来の予定された研究の流れに戻ることによって解消する予定である。
後者の原因は、不透明な部分があり、今後改善されるとは限らない。その場合、研究期間延長の要件を充たしていれば、2020年1月に延長の手続きをとることによって、解決する予定である。

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Published: 2019-12-27  

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