2016 Fiscal Year Research-status Report
医療・心理・教育におけるナラティブ・データの分析手法の確立と文学研究への応用
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16K02606
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
奥田 恭士 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10177173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 靖子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (00331679)
保坂 裕子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00364042)
糟屋 美千子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20514433)
内田 勇人 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (50213442)
寺西 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90321497)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多面的ナラティブ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、挑戦的萌芽研究「医療・心理・教育におけるナラティブ・データの汎用性の検証と分析手法の確立」(平成25年度~平成27年度)の発展的研究である。これまでの研究では、おおむね治療と効果に重点を置いた「非文学」分野のナラティブ研究において、文学的視点の導入という点で新たな可能性を見開いてきたと言える。それを受けた本研究では、物語論・文体論・ディスコース分析から援用した分析手法を統合・発展させ、「非文学テクスト」の分析手法を文学研究に再導入することによって、文学ナラティブ理論の再構築を目的とする。平成28年度は、研究の第一段階として、医療・心理分野でのナラティブ研究の発展経緯と理論に関する主要な文献を精読・再読し、当該分野の新たな動向を精査した。主として、語り手および語り手と聞き手との関係性、両者間で生成される語りを分析・検討するための基本的な作業を行った。その結果、ナラティブ・アプローチに関する国内外の文献研究を進めることによって、本研究で扱う内容と方向性を明確化できた。また、文学・言語学・物語論・文体論・ディスコース分析の理論研究を精査し、医療・心理・教育の分野におけるナラティブ分析の援用例にも焦点を当てながら、テクスト分析の手法が各分野ごとにどの程度応用可能であるかが分かった。以上の先行研究の結果を踏まえ、次年度以降、学校・教育機関、介護老人保健施設、児童養護施設、医療機関を対象とするナラティブの収集をより効果的に行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、先行研究の精査と仮説の設定、研究手法の確立を中心に研究を進めた。当初の計画通り、おおむね順調に進んでいる。本研究を遂行するに当たり、医療・心理分野でのナラティブ研究の発展経緯と理論に関する包括的な文献研究を深め、最新の動向についても検討した。特に、本研究で実践する高齢者のナラティブ分析および心理臨床分野における自我違和的な経験の語り分析について、語り手と聞き手との関係性に視点を置いた検証を行った。その結果、本研究の内容や方向性をある程度明確化できた。また今後各分野で収集するナラティブに関して、前研究のテクスト分析を文学研究へと再導入する場合のメリット・デメリットについても、分担者間で検討する機会を持つことによって、相互理解を深めた。次年度以降のナラティブ収集に当たり、有効な準備と成り得たと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、先行研究の成果に基づいて本格的なデータ収集を行うが、これと並行してナラティブの質・量的な分析およびテクスト分析を進めていく。まず、介護老人保健施設での研究では、本年度の研究において得られた新たな視点に基づいて被験者の「語り」をデータとして記録し、教育機関や医療機関等での研究では、定期的なフォローアップの面談に基づき、心理的支援法としての効果の測定を行う。一方、それぞれの分野の観点から収集・分析された語りについて、物語論・文体論・ディスコース分析の観点からテクスト分析を行う際、どのような言語学的アプローチが可能かを明らかにしていく。また、研究代表者、研究分担者ごとに成果発表を積極的に開始し、グループ全体の成果についても、随時公開していきたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、おおよそ当初の計画通りの執行であったが、各研究分担者により次年度での経費使用の希望があったため、一部を繰越とし、グルー プ全体では予定の6%程度(96,913円)を次年度繰越とした。使途は、設備・備品費として、ナラティブ・データ収集および分析のための機器、 先行研究に関わる専門書・雑誌等の書籍費、プリンタなど周辺機器に使用する消耗品費に加えて、国内・国外旅費、また、研究分担者によりナラティブ研究上必要と見なされる研修費用などである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度研究費の使用計画としては、分析手法に関する専門書など書籍費およびデータ記録メディアを含む周辺機器消耗品費に加えて、国内・国外旅費、データ提供や分析に関わる謝金と人件費が必要となる。また、グループ全体の研究成果を発信するために、学会・シンポジウム等への参加および開催費用を見込んでいる。
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Research Products
(7 results)