2016 Fiscal Year Research-status Report
クィア理論と日本文学ークィア・リーディングの可能性と実践
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16K02614
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中川 成美 立命館大学, 文学部, 教授 (70198034)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クィア / ジェンダー / 日本文学 / 比較文学 / 国際ネットワーク / クィア・リーディング / 文学理論 / アフェクト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3回の研究会、および海外学会発表、および打ち合わせを行った。第1回は2016年6月23日、キースヴィンセント氏(ボストン大学)を招き、「子規と漱石―クイアーな友情、俳句のホントロジー 」(ディスカッサント:木村朗子氏・津田塾大学、依田富子氏・ハーバード大学)を開催した。第2回は2016年7月15日、ジェラルド・プルー氏(セルジ・ポントワーズ大学)を招き、「江戸川乱歩の『孤島の鬼』に於ける読書論とジェンダー論(ディスカッサント:サラ・フレデリック氏)を開催した。第3回は2017年1月20日、ジャリーヌ・ベルント氏(ストックホルム大学)による「情動の力:マンガとクィアリング」(ディスカッサント・中川成美)を開催した。会場はいづれも立命館大学衣笠キャンパスにて実施した。 また2016年8月30日から9月21日まで、中川のフランス滞在中に、ジェラルド・プルー氏や、アントナン・ベシュレール氏(ストラスブール大学)らと研究協力に関する打ち合わせを行った。具体的には次年度の研究会開催についてである。2017年3月10日・11日には、モントリオール大学で開催された”From Trinity to Fukushima and beyond ”にて"Images of 3/11 in Women Writers in Japanese Literature" を発表、ここでもリヴィア・モネ氏(モントリオール大学)らと研究会開催の打ち合わせをした。また続いてトロントで開催されたAASにて、"Communism and Sexuality :Queer desire in Japanese Proletarian Literature"を発表した。クイア理論の構築を目指したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は概ね順調に進展した。キース・ヴィンセント氏、ジェラルド・プルー氏、ジャクリーヌ・ベルント氏の来日中に組織した研究会は充実したものとなり、今後の日本文学・文化におけるクィア・リーディングの可能性を指し示すものとなった。また中川自身のクィア・リーディングを主眼とする研究発表についても、内外の研究者仲間から多くの示唆を得た。2016年10月にはパリ・ディドロ大学とパリ日本文化会館の共催による「江戸川乱歩、あるいは近代の迷宮」と銘打たれた国際シンポジウム、および展覧会、映画祭は、フランスでも反響を得たが、この組織委員として参加、発表をした。本研究課題を発展させ、国際ネットワークを構築するためにも大きな成果があった。 遅れている課題としては、関連書籍の翻訳であるが、対象評論をリストアップして、今後、ここから関連書籍、関連論文の翻訳を進めていきたいと考えている。 理論的構築については、キース・ヴィンセント氏、リヴィア・モネ氏、トム・ラマール氏(カナダ・マッギル大学教授)、セシル坂井氏(パリ・ディドロ大学教授)、呉佩珍氏(台湾政治大学)らとパネル、研究発表などを通じて論議を重ねた。今後に日本文学におけるクィアリーディングの論文集を出版したいと希望している。それに伴って、国際的なネットワークを構築して、今後発展させていきたい。 本年度は作家招聘の予定がかなわなかったが、多和田葉子氏とは別の機会でお会いした折に、協力を約束してくれた。また、江戸川乱歩シンポジウムでは、招待講演に桐野夏生氏が参加くださり、本研究の意図などについてお話しした。今後、協力が取れればと願う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の予定としては国際ワーク・ショップ、国際共同研究のための打ち合わせとして台湾政治大学を訪問する予定である。また北米、ヨーロッパいづれかでのワークショップの開催を企画したいと考えている。海外文献の翻訳についてはトマス・ラマール氏の”Shadows of Screen”を中心に行いたいと考えている。この谷崎潤一郎の視覚映像論を中心とする研究のなかからクィア理論の問題を考える。公刊に耐える文章に錬成していき、いずれ出版に結びたい。またミリアム・シルバーバーグ氏の著書2Erotic Grotesque Nonsense“の翻訳も候補としたい。データベースの作成が遅れているが、作成されたものを基盤に実際のリーディングを行い、対象作品を考えていきたい。それらは研究会で取り上げられる予定である。 作家の招聘については、当該年度は実施を予定して、人選にはいった。このほかには、理論構築のプロジェクトを推進したいと考えている。特に若手研究者、また大学院生を中心とする研究会を発足させ、指導にあたりたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度の海外旅費に関する書類が整わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
早急に先方から送付してもらい、2017年3月に実施されたカナダでの研究、調査旅費費用を処理したい。これについては本年度に使用する予定のものであり、次年度予算は計画通りに実行する予定である。
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Research Products
(5 results)