2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02662
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
上保 敏 富山大学, 人文学部, 准教授 (80553114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朝鮮語学 / 言語学 / 訓読 / 釈読 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,朝鮮半島でかつて行われていた漢文訓読について,各資料の間の系統を明らかにし,新たに朝鮮語漢文訓読系統論を打ち立てることを目的とするものである。2年目にあたる本年度は,初年度に行った高麗時代の漢文訓読資料(釈読口訣資料)の各資料の間の関係性についての検討をふまえ,それを補完しつつ,高麗時代の釈読口訣資料と15世紀中葉の訓民正音(ハングル)創制以降のハングル資料(諺解資料)との間の関係性について追及した。より具体的には,各資料に現れる具体的な漢字の読法に着目し,同一の漢字の読法が,1.高麗時代の釈読口訣資料の間で一貫しているのか否か,2.高麗時代の釈読口訣資料以降,15世紀以降の諺解資料との間で一貫しているのか否か,について検討を行った。この検討は,基本的には既存の影印・影照を用いて行ったが,既存の影印・影照で不明瞭な部分,確認を要する部分については,関連資料の所蔵処に直接赴き,資料調査を実施して補完した。また,国内外の朝鮮語学や朝鮮語史,漢文訓読の著名な研究者と常に密に連絡を取り,最新の研究情報を交換するとともに,朝鮮語学・朝鮮語史のみならず,日本語漢文訓読研究に関する研究図書をも参照しつつ,総合的に執り行った。さらに学期末には,本年度に執り行った検討により,いくつかの用例に基いて朝鮮語漢文訓読系統論の試論を打ち立て,その一端を学界に報告した。 なお,配分された研究経費の使途については,以上にあげた種々の検討のための関連機器の購入費,朝鮮語学・朝鮮語史・日本語漢文訓読関係などに関する図書購入費,および,資料調査や研究成果発表のための出張経費等に充てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,年度当初の4月に不慮の事故により負傷したことに対する入院・手術・治療・リハビリなどに奮闘したことにより,調査が当初の計画通りに進まない部分があった。特に,資料調査のための出張が滞った。ただし,前年度に一部,先取りをして検討を行ったことも幸いし,甚だしい遅延は生じなかったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の遅れについては,最終年度に行う予定であった調査と重なる部分も多いため,次年度に総合的に実施をし,その挽回に努めるつもりである。
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Causes of Carryover |
本年度は215,933円に残額が出たが,これは主として,先にあげた事由により,調査が当初の計画通りに進まない部分があったことによる影響が大きい。これについては,最終年度に総合的に検討を執り行うことにより,残額の執行を行うつもりである。
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