2017 Fiscal Year Research-status Report
ティフィナグ文字を併記した『ベルベル語辞典(日本語-タマズィグト語)』を編纂する
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16K02703
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
石原 忠佳 創価大学, 文学部, 教授 (10232331)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ティフィナグ文字 / Tifinagh / IRCAM / ベルベル語諸方言 / ベルベル語辞典 / Tamazight / リビア文字 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本学術振興会(研究成果公開促進費)にて、平成26年3月に刊行した拙著『ベルベル語とティフィナグ文字の基礎-タリーフィート語入門-』,(春風社)で取り上げたベルベル語の語彙を発展させ、ベルベル文字とラテン文字を併記した『ベルベル語辞典』を刊行することである。その必要性として、①ベルベル語は北アフリカ全体で約2500万人の話者を抱えているにもかかわらず、ベルベル文字(ティフィナグ文字)を併記した辞典が、今日まで刊行されていないこと。②これまで「ベルベル語は綴られることのない話し言葉である」と認識され、文字として書きとどめられることがなかったこと。③ベルベル語の使用地域は北アフリカ各国に飛び地的(Enclave)に散在しているため、どの地域の言葉を「ベルベル語」として定義するかが困難であったこと。 などがあげられる。 応募者は先の平成25年~27年科学研究費の助成を得て、ポエニ文字から古代リビア文字を経て派生したとされるベルベル文字(Tifinagh)の再築に取り組んだ。この語彙を基盤として、今年度までベルベル文字を併記した『ベルベル語辞典』の編纂を手がけてきたが、ベルベル文字といってもその使用は時代と地域によって異なり、バリアントが豊富なため、どの時代のものを <ベルベル文字> として辞典に表出するのかという課題が今だに未解決のままである。今日まで本格的な辞典が編纂されなかった事実は、こうした現実を反映していることが、これまでのフィールドワークを通して切実に認識できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度夏期の主な作業は、スペイン高等学術研究所(CSIC),[所在地Cuesta del Chapiz 21, Granada]において、かつてアルジェリアやチュニジアを支配したベルベル系王朝、ザイヤーン朝(1236-1550))の歴史を辿り、ザナータ系ベルベル語がどのような過程を経て、今日のムザブ系細分化方言(Tumzabit)やシャウヤ系細分化方言(Tashawit)の形態に至ったのかを検証であった。 その後の平成30年度春期には、中部モロッコ・中アトラス山地のKenifra周辺のベルベル語使用地域を調査してその成果を整理し、「在ラバト モロッコ国立ベルベル文化研究センター」(Institut Royal de la Culture Amazighe)の蔵書を閲覧して、調査結果の整合性を検証した。さらには、現在モロッコ各地の大学においてベルベル語教育に携わるChahid El Hajami 氏に『ベルベル語辞典』に掲載する語彙の適切性のチェックを依頼済みである。氏が教鞭をとるクラスの生徒の多くは、ベルベル系住民でありながら、日常会話にはアラビア語を使用しているため、ベルベル文字の存在を認識していない生徒がそのほとんどである現状を、授業での具体的な場面を取り上げて紹介していただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずもって平成30年夏期に予定している作業は、Chahid El Hajami 氏との会見である。氏との会談の日程はすでに決定済であるが、これまでに収集してきたベルベル語のバリアントが、具体的にはモロッコのどの地域で使用されているのかを正確に把握しなければならない。その後は対応するベルベル文字を選定・表出し、辞書に掲載する文字を確定する最終的な作業に入る。以前にHajami氏から、連続子音における母音挿入の一般法則について教授されたが、今後はその具体的実例を引き合いに出して検証しなければならない。今回のベルベル語辞典編纂は、当初は平成31年の刊行を予定していたが、今年度中に当初の計画が完了できない場合は、ベルベル文字のバリアントを選定する作業を、翌年以降も継続して推進することも念頭においている。
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Causes of Carryover |
平成30年度は当該研究の最終年度に該当するため、2019年春期におけるヨーロッパ滞在期間が長くなる計画である。そのため滞在費、交通費のための使用額を多めに確保した。
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Research Products
(11 results)