2018 Fiscal Year Annual Research Report
From Latin to Old High German: Mood agreement and mood difference in the Bible translation
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16K02709
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
黒沢 宏和 近畿大学, 法学部, 教授 (20264468)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古高ドイツ語 / ラテン語 / 聖書翻訳 / タツィアーン / モダリテート / 直説法 / 接続法 / 法 |
Outline of Annual Research Achievements |
Kurosawa (2009) によれば、古高ドイツ語『タツィアーン』の中で、ラテン語と古高ドイツ語間において法の異なる箇所(Modusdifferenzen)が主文・副文併せ544例あることが報告されている。そのうちthaz (nhd. dass)文は52例あり、その内訳はラテン語・古高ドイツ語間で1)接続法から直説法への変換は34例、2)直説法から接続法への変換は18例となっており、条件文や関係文と比べ直説法の使用頻度が高くなっている。又、『タツィアーン』においては、主文から副文への影響によって、副文に接続法が現れる現象が顕著であり、この主文から副文への影響を受けずに副文に接続法が現れる例は、107例中わずか14例(13%)しかない。この14例中、11例(79%)がthaz文に集中している。この2点がthaz文の特徴と言える。 本年度は上記thaz文における52例の法の不均衡の原因を解明することを第一の目的とした。2018年6月に、沖縄外国文学会第33回大会で「古高ドイツ語『タツィアーン』のthaz文における接続法」と題して口頭発表し、研究成果の一部を発表した。その後、8月にはドイツへ赴き、レーゲンスブルク大学で文献収集を行った。その際、同学のグロイレ教授に本研究に関する貴重な助言を頂いた。これらの資料や学会発表後の質疑応答を踏まえ、研究内容をさらに修正・深化させ、その成果を『Southern Review』第33号へ投稿した。
本年度の研究成果として以下の3点が明らかとなった: 第一に、基本的にthaz文中に直説法が現れていても、接続法が現れていても、そのニュアンスの違いは認められない。第二に、主文からの副文への影響の有無と、副文の話法化(Modalisierung)との間に相関関係はない。第三に、接続法による文体的効果が認められる例においては、そもそも文脈上モダリテートが認められる。これに加え、接続法によってモダリテートが付加され、文体的効果へと至る。
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