2016 Fiscal Year Research-status Report
形態部門と統語部門にまたがる文法化と構文化についての統語論的研究
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16K02753
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 芳樹 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (20322977)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 複合名詞の構文化 / 日本語の主格属格交替 / 統語構造の縮小と語彙化 / 生成統語論 / パラメータ値の再設定と言語変化 / 歴史コーパス / 容認性判断の世代間比較 / 幼児発話コーパス(CHILDES) |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度の業績は、主に、以下の5点に分類できる。まず、学際的研究組織「言語変化・変異研究ユニット」の主宰者として、28年度もワークショップ1回と公開講演会2回を企画運営した他、同メンバー25名が寄稿し11月に刊行された論文集「コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論」の編集責任者を務めた。また、Joan Bybeeの著書「Language Change」の翻訳書(開拓社から31年度に刊行予定;11人で分担)の翻訳と編集を引き受けた。 第二に、形態部門と統語部門にまたがる構文化についての研究を、日本語と英語の複合名詞(同格複合語)と名詞句(等位同格構文)を中心に継続し、その成果を、上述の論文集「コーパスから~」に収録した。 第三に、昨年から、日本語の主格属格交替についての単独研究(コーパス調査とその結果の生成統語論的分析)と、心理学者の新国氏・和田氏との共同研究(容認性判断の世代間変異についての大規模調査とその結果の生成統語論的分析)をはじめた。その成果は、昨年9月に開催した「言語変化・変異研究ユニット」の第3回ワークショップで単著1編と共著1編を口頭発表した他、認知科学関連のジャーナルの特集号に論文を投稿し、査読は最終段階にある。また、約2000名を被験者とする第2回調査も今年3月に実施し、その結果を共同研究者とともに現在分析中であるほか、コーパス調査(単独研究)についても、対象を前回の「小説」から「新書」「自伝」に拡大し、言語変化の調査を継続中である。 第四に、原口庄輔・中村捷・金子義明(編)『チョムスキー理論辞典(増補版)』が昨年11月に刊行されたが、この中の6項目について執筆を担当した。 第五に、宮田Susanne氏(愛知淑徳大学教授・国立国語研究所研究員)の協力を得て、私の長女の4歳2月までの発話が、CHILDESデータベースから昨年10月に公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果のうち『チョムスキー理論辞典(増補版)』の項目の執筆(社会貢献)以外の4領域について、いずれも、予定した通りに研究成果を公表でき、その後も継続して理論的研究・コーパス調査・発話の記録が続行中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
「形態部門と統語部門にまたがる文法化と構文化についての研究」という研究課題のもとでは、上記の他にも、(1)日本語の複合動詞の文法化と語彙化の研究、(2)派生名詞の構成要素の一部のみを修飾できるときの形容詞と接辞のペアについての意味的・統語的分析、(3)動詞または名詞由来の前置詞・後置詞を派生する文法化についての研究、などを視野に研究を進める予定。
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Causes of Carryover |
国際学会での口頭発表のための旅費による支出を予定していたが、応募が採択されなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度中に開催される国際学会での口頭発表を目指す。
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Research Products
(10 results)