2017 Fiscal Year Research-status Report
形態部門と統語部門にまたがる文法化と構文化についての統語論的研究
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16K02753
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 芳樹 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (20322977)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本語の主格属格交替 / 統語構造の縮約と語彙化 / 容認性判断の世代間比較 / 尺度名詞構文 / 述部倒置 / 統語的構文化と文法化 / 歴史コーパス / 言語獲得と言語変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度の業績は、主に、以下の4点である。 第一に、一昨年から始めている、日本語の属格主語文の構造的縮約と語彙化についての単独研究(コーパス調査とその結果の生成統語論的分析)と、心理学者の新国氏・和田氏との共同研究(容認性判断の世代間変異についての大規模調査とその結果の生成統語論的分析)を進めた。その成果は、(i)「言語変化・変異研究ユニット」第4回ワークショップで単著1編と共著1編を口頭発表、(ii) 国際学会LACUS 2018で口頭発表し、査読有Proceedings(LACUS Forum 44)への掲載も確定、(iii) 日本心理学会第81回大会でポスター発表し、大会優秀発表賞を受賞、(iv) 国際学会SNU-ICL(2018年6月)での口頭発表に採択された。 第二に、本来、語レベルの要素しか含むことができないはずの名詞化接辞や複合名詞が句を包摂する現象(かなりの自信家、かなりの巨大生物、等)についての口頭発表を、同ユニット第4回ワークショップとMorphology & Lexicon Forumで行った。 第三に、「あの山は高さ(が)3000mだ/あの山は3000mの高さだ」のような尺度名詞と数詞の主述関係を含む構文について、歴史コーパスの調査から、その発達過程を明らかにした上で、述部倒置により後者を前者から派生する統語論分析を行った。その成果は、2018年中に、くろしお出版から刊行予定の論文集『レキシコン研究の新たなアプローチ』(影山太郎・岸本秀樹編)に掲載予定である。 第四に、一昨年10月からCHILDESデータベースに公開されている、申請者の長女の4歳2月までの発話データに、このたび、4歳3月から6歳0月までの発話データを追加するための申請を、宮田スザンヌ氏(国立国語研究所研究員)に行い、現在、宮田氏のチームの中で形態素タグ付けが進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主格属格交替と尺度名詞構文についての研究成果はいずれも、予定した通りに研究成果を公表でき、その後も、理論的研究・コーパス調査・容認性大規模調査が順調に進んでいる。中でも、大規模ウェブ調査にもとづく主格属格交替の容認性の世代間比較の共同研究では、コーパス調査の結果から予測される通りの言語変化が容認性判断の結果からも裏付けられており、複数の国際学会で採択されているほか、日本心理学会の優秀発表賞も受賞するなど、当初の予想を上回る成果を得ている。 今年で6年目となる「言語変化・変異研究ユニット」の活動も順調であり、29年度も、1回のワークショップと2回の公開講演会を開催したほか、一昨年秋に刊行した「コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論」も売れ行きがよく、第2弾(寄稿者20~25名程度)の刊行に向けての準備も開始した。また、この研究ユニットのメンバーを中心に作業中のJoan Bybee (2010) Language Change (Cambridge University Press)の翻訳書(開拓社)の刊行に向けての準備も、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
「形態部門と統語部門にまたがる文法化と構文化についての研究」という研究課題のもとでは、上記の他にも、(1)日本語の複合動詞の文法化または語彙化の研究、(2)派生接辞を伴う名詞の構成要素の一部のみを修飾できる形容詞の意味的・統語的タイプの調査と分析、(3)複合動詞の後項の文法化と統語的複合動詞の通時的発達、(4)動詞または名詞に由来する前置詞・後置詞の発達と文法化についての研究、(5)言語獲得と言語変化の関係についての研究(言語獲得の論理的問題への解法を与えること)、などを視野に入れつつ、研究論文の執筆の準備をしている。
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Causes of Carryover |
理由:複数の国内学会への参加(資料収集)のための旅費による支出を予定していたが、校務多忙のため参加できなかったため。 使用計画:30年度中に開催される国際学会での口頭発表が2件決まっている。また、30年度は複数の国内学会への参加と発表も予定している。
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Research Products
(14 results)