2017 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害教育から切り拓く国際共生社会における日本語インクルーシブ教育の基盤構築
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16K02819
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
河住 有希子 日本工業大学, 工学部, 准教授 (10605372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 恵 立教大学, 日本語教育センター, 教育講師 (80606070)
北川 幸子 神田外語大学, 留学生別科, 講師 (10550650)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 視覚障害 / 点字 / 日本語教育 / 日本語学習 / 読解ストラテジー / ノートテイキング / 留学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、視覚に障害のある日本語学習者を対象とした授業実践例の蓄積と、当事者への日本語点字文書触読調査およびインタビュー調査を行った。以下に詳細を示す。 (1)視覚に障害のある日本語学習者への授業実践例の蓄積 これまでの研究成果に基づく効果的な授業方法の仮説を検証するために、視覚に障害のある学習者を対象とした日本語授業(専門教育機関で鍼灸等を学ぶ日本語学習者への補習授業)を行っている。平成29年度は特に、複数の資料から必要な情報を見つけ出すスキミング・スキャニングを点字文書で行う場合の方略の検証、得られた情報を整理し記録するためのノートテイキングの方略の検証に主眼をおき、授業実践を行ってきた。授業実践の記録はポートフォリオ化し、平成30年度以降、分析する予定である。 (2)日本語点字文書触読調査およびインタビュー調査 点字使用者を対象として、読解ストラテジーのありようを明らかにするための調査を行った。先行研究で報告されている、日本語を母語とする点字使用者の読解ストラテジーと比較することで、日本語学習者に対して重点的に指導する必要のある項目が明らかになった。また、点字でのノートテイキングに対する意識調査(インタビュー)と実態調査も行った。調査の結果は平成30年度に開催される日本語教育国際研究大会にて報告する予定である。読解ストラテジーの使用やノートテイキングは、いずれも視覚から得られる情報への依存度が高く、点字使用者への指導については、これまであまり議論されていなかった。しかし、本研究を通して、点字使用者においても様々なストラテジーの使用が認められることが分かり、今後の展開への足掛かりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において予定していた授業実践例の蓄積と、視覚に障害のある学習者の日本語運用能力と、学習への志向を把握するための調査を、計画どおり行うことができた。
研究計画においては世界各国の教師間ネットワークの再構築も予定していた。平成29年度末の時点で、情報提供の依頼は完了しているがレスポンスが少ないため、平成30年度以降、さらに積極的に働きかけ、情報収集と情報共有システムの構築に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、視覚に障害のある学習者への授業方法(教師側からの配慮)、授業内容(学習者にとっての困難さの所在)の検証を行ってきた。現在は、さらにコンテンツとしての学習内容の精査にも着手している。また、これらの研究成果を共有するための情報ネットワークの構築を視野に入れ、人的交流も進めている。
今後、まずは、教育方法と教育内容の仮説を検証し、方法論として提案すべく総括を行う。また現在は、視覚に障害のある学習者への日本語授業を担当する教員に対して、個別に連絡をとり支援しているが、関係者間で相互に自由に情報交流できる場の構築を計画している。
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Causes of Carryover |
平成29年2月7日から平成29年8月31日まで産前産後休暇・育児休業を取得したため、主に旅費に残額が生じた。次年度使用額分は、平成30年度に開催される国際研究大会への参加費用にあてる予定である。
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