2017 Fiscal Year Research-status Report
「移動して学ぶ」時代の日本語教育―留学体験の意味づけの変容・維持過程の分析からー
Project/Area Number |
16K02824
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
丸山 千歌 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (30323942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 伊久美 国際基督教大学, 教養学部, 講師 (60296796)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本語学習者 / 日本留学 / 日本語授業 / PAC分析法 / TEA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、かつての日本語学習者の視点を活用して、日本留学・日本語学習がいかなる位置づけとして認識されなおされていくかを見ることで日本留学や日本語授業が学習者にどのような影響をもたらすかを解明することである。 現在、若者が世界中を移動しながら学び成長する姿が自然な形として受け入れられるようになっている。こうした移動しながらの学びに期待されるのは、グローバルな観点から、「21世紀型スキル」を持った人間を育てることであるが、もう一方には、ローカルな観点から、「現地を知っている」「現地に通じる」人間を増やすこと、日本で言えば「知日派」の育成である。研究代表者らは、日本語教育は、学習者にとってアクセスしやすい形で、この両方の観点を持った教育が提供できる、ポテンシャルの高い分野だと考え、これまで学習者の視点、特に日本語学習者が日本語教科書とどのように向き合っているかという学習者個人と教材とのインタラクションの観点から、教材作成や教材選定、授業運営への提言につなげるための研究を行ってきており、本研究課題に応えることは、冒頭で述べたグローバルな観点とローカルな観点の両方を持ち合わせた日本語教育の可能性を示すことにつながる。 研究手法は、これまで用いてきたPAC分析法に加え、人間の成長を時間的変化と文化社会的文脈との関係の中で捉え、記述するための方法論的枠組み複線径路・等至性アプローチ(以下、TEA)を採用した。 調査協力者は、研究代表者および研究分担者が所属機関、協定校で構築したネットワークを活用して選定している。TEAでは、対象者を1人、4±1人、9±2人のいずれかにすることが推奨されているので、推奨数に合うよう確保し、分析を行い、「移動しながら学ぶ」時代の中での日本語教育、特に日本語授業に新たな価値づけを行うとともに、教材作成・教材選択・授業運営への提言を行い、発信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4段階で進める計画を立てている。第1段階:PAC分析の実施に向けた調査計画とフェイスシートの検討を行う。第2段階:PAC分析インタビューを実施、結果の考察を行うとともに、複線経路・等至性モデル(TEM)図を作成する。第3段階:インタビュー結果をもとに作成したTEM図とともに、2回目のインタビューを行い、その結果をもとにTEMを修正、さらに3回目のインタビューを行い、TEMを完成させる。第4段階:調査協力者と研究代表者らの双方が納得したTEMを基に考察を行う。 というものである。 1名の調査協力者に対するインタビューについてはテストケースとして2017年度までに3回目のインタビューと分析までを先行して論文にまとめた。また2名の調査協力者に対するインタビューの2回目までを実施し、現在3回目のインタビューを計画しているところである。今後もう1名に対するインタビューを開始することを検討しているが、全体として計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は現在進行中の2名に対するインタビューを3回目まで実施し分析し、この2名について日本語教育世界大会においてポスター発表として研究成果の一部を報告する予定である。また、もう1名の調査協力者の選定も行い、3回目までのインタビューの実施と分析を行い、本研究の総括を行いたいと考えている
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Causes of Carryover |
2017年度は論文による成果発表にとどまり、本プロジェクトのための学会発表のための出張を行わなかったが、2018年度はもともと予定していた学会発表に加えて、成果の一部を発表するための出張を行うことを検討している。また2017年度は調査協力者が東京近郊在住であったため調査のための旅費を使用しなかったが、2018年度の調査では調査のための旅費を使用する計画がある。
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