2017 Fiscal Year Research-status Report
クリエイティブな分野における異文化間コミュニケーション:英語ニーズと戦略の研究
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16K02941
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 紀子 立命館大学, 国際関係学部, 非常勤講師 (40466909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 ジュディー津多江 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 名誉教授 (30351787)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | LSP / ジャンル / アート / グローバル化 / 言語化 / コンテキスト / 戦術 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果の一部を香港大学で開催された国際学会"CAES International Conference: Faces of English 2"で報告し、フィードバックを得た。世界的に知られる応用言語学者数名による基調講演からは本研究にも生かせる新たな視点が得られて大変有益であった。一方、同学会での発表の多くは実践報告であるのに違和感を覚え、多様な視点からフィードバックを得るため、より学際的な学会で発表する必要性を認識した。そこで、次年度にウェールズのカーディフ大学で開催されるApplied Linguistics and Professional Practice(ALPP)の国際学会に応募し、口頭発表とポスター発表ともに採択された。
調査では、アーティストの他、アート助成団体のスタッフやアート専門の翻訳者・通訳者たちにもインタビューを実施した。それにより、アート・デザインの分野で日本語と英語で言語化するニーズが高まっていること、それに不慣れなアーティストに対して言語面のサポートが提供されていることを知ることができた。今年度は、より国際的に活動するアーティストに何人かインタビューすることができた。さらに作品の言語化が創作プロセスに変化を与えていることも伺え、国際的に見ても新しい研究に発展させることができると確信した。
分析対象とする文書の「ジャンル」はself-promotional genresに絞り、分析を進めた。この他、JACET(大学英語教育学会)のサマーセミナーに参加し、「国際語としての英語」(English as a lingua franca)の視点を本研究に取り入れた。講師のBarbara Seidlhofer教授(ウィーン大学教授)と個別に話し、本研究に興味を持って頂いた。学術英語学会の研究者のためのセミナーにも参加し、アーティストと研究者に共通する英語ニーズを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたクリエイティブな分野のESP研究以上の成果を示すことができる見込みであり、さらにより学際的な研究として発展できる可能性にも気づいた。インタビュー調査によりアーティストらによる日本語による言語化のニーズが高く、課題となっていることも確認できたため、英語のみならず日本語も含めたLanguage for Specific Purposes (LSP)の研究として発展しつつある。質的研究方法と組み合わせることにより、言語分析だけでは見えないことが見えてきた。インタビュー調査や香港大学の国際学会やJACET(大学英語教育学会)サマーセミナー参加により、新たな視点を得るとともに、本研究の意義も再確認することができた。アートにおける言語・コミュニケーションの役割についての先行研究は極限られているが、本研究からそれについて新しい問いを立て、新しい知見を示すことができると思う。国際学会での発表に連続して採択されていることは自信につながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ジャンル分析については、self-promotional genresに絞って引き続き分析を進める。話し言葉のジャンルのデータが集められていないので、サイト上で公開されているビデオの活用を含め、どのようにして集めるべきか検討する。インタビュー調査も継続し、アート系の学生に専門英語を教える外国人教員による個々の取り組みについても調べ、協力を得て共同企画(学会発表、出版など)を進める。
日本語と英語を含めて、言語化のニーズが高まっている背景をより詳しく調べる。国際語としての英語(English as a lingua franca)の視点を取り入れ、従来のESP研究に見られたネイティブによる「モデルを探し」とは異なる視点から日本人のアーティストらによる英語使用を戦術(tactics)として捉える。
さらに、本研究から言語面のグローバル化のプロセスの捉え直しもできないか検討する。国際的に発信してフィードバックを得つつ、国際的なレベルの学際的な研究として発展させる。
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Causes of Carryover |
今年度に予定していた国際学会(International Association of Applied Linguistics, AILA)で報告予定であったが、キャンセルしたためブラジルのリオデジャネイロまでの3名分の渡航費と滞在費や同学会参加費などが浮いた。前期の授業の最終週と重なり時期的に難しい上、ブラジルでエボラ熱の流行しているため回避した方がよいと判断した。次年度はウェールズとエディンバラで開催される国際学会に参加予定である。前者での発表は採択されており、後者については応募中である。加えて、ウィーン大学のBarbara Seidlhofer教授より同大学の客員研究員として受け入れを承諾して頂いた。夏休みの間に滞在し、同教授より助言を得つつ、国際共同研究の可能性についても探る予定である。
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