2016 Fiscal Year Research-status Report
蝦夷地のアイヌ有力者が入手した外来交易品と勘定システムの成立に関する研究
| Project/Area Number |
16K03007
|
|---|
| Research Institution | Hokkaido Museum |
|---|
Principal Investigator |
東 俊佑 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (30370224)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
| Keywords | 交流史 / 北海道史 / アイヌ / 蝦夷地 / 場所請負制 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、以下の2項目について研究とそれに係る作業・調査を行い、成果を公表した。
１．北海道大学附属図書館所蔵のアイヌ交易帳簿『北蝦夷地用』の翻刻を進めながら、稼ぎ高や貸付高の額、貸付品や支給品等の種類・数量・値段等のデータのExcel（表計算ソフト）への入力作業を進めた。また、帳簿が作成された時代（1860年代）や地域（北蝦夷地（サハリン・樺太）ウショロ場所）の状況を把握するため、国立国会図書館所蔵の『蝦夷地御用留』の史料調査を実施した。本帳簿に記載のアイヌ69名のなかの一人でもあるハウトンマカ（トコンベ）が引き起こしたロシアへの逃亡事件「トコンヘ一件」について、従来の研究史を見直し、事件を再構成し、「『トコンヘ一件』再考」と題して白木沢旭児編『北東アジアにおける帝国と地域社会』へ論文を寄稿した。
２．ロシア連邦サンクトペテルブルクの東洋古籍文献研究所が所蔵するアイヌの交易帳簿『簾貸帳』と『大福帳』の分析をすすめるにあたって、帳簿が作成された時代（1800年代）や地域（カラフト（サハリン・樺太）南部）の状況を把握するため、国立公文書館所蔵の『蝦夷地一件』、『休明光記』の史料調査を実施した。また、帳簿がロシア側に接収されるきっかけとなった1806～07年のフヴォストフ事件について研究発表を行った。また、帳簿の伝存経緯を知る手がかりとなるロシア国立サンクトペテルブルク図書館所蔵の「蝦夷地奉行定書」について、史料紹介を『北海道博物館研究紀要』第2号に寄稿し、公表した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
帳簿のデータ入力作業は若干滞っているが、帳簿を分析するための歴史的背景の調査や研究は順調に進展している。『北蝦夷地用』のデータ入力は前半の半分程度終了している。後半部分は、前半部分に比べると不完全な記載のため、帳簿の分析は次年度以降進展させることができる状況にある。また、帳簿の歴史的背景に関する研究では、論文1つ、史料紹介（研究ノート）1つを執筆・公表することができ、研究発表も1つ（ほぼ同一内容のもの2回）を実施することができた。以上から、自己点検の結果「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、『北蝦夷地用』のデータ入力作業を完了させ、分析結果を論文に取りまとめることを課題に設定する。そのために、国立国会図書館や福井県立文書館、大野市史編纂室等で史料調査を実施することを予定している。また、平成28年度に行った研究発表の内容を原稿に取りまとめることももう一つの課題に設定する。そのために、フヴォストフ事件に関する史料調査を国立公文書館等で実施することを予定している。さらに、平成30年度以降において、北海道博物館所蔵のアイヌ経営帳簿『土人勘定差引帳』の分析を進めるため、帳簿のデータ入力作業の準備（撮影写真の丁番号付けや翻刻作業）を進めることとする。
|
| Causes of Carryover |
支出額の費目は物品費と旅費である。物品費や旅費の額は、物品を購入する時期、旅行する時期など、さまざまな条件により変動するものであり、当初計画どおりすべてを使い切ることは不可能である。残額1,162円は、次年度予算のなかの増減で使い切ることが十分に可能な額であることから、次年度に繰り越すこととした。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の残額1,162円は、平成29年度に購入する物品や旅行に係る予算の増減のなかで相殺されることを見込んでいる。
|
Research Products
(4 results)
-
-
-
[Presentation] フヴォストフ事件についての日本側史料2016
Author(s)
東俊佑
Organizer
国際シンポジウム「ロシアと日本側の史料に見る日露関係」
Place of Presentation
ロシア国立経済高等大学（ロシア連邦サンクトペテルブルク市）
Year and Date
2016-10-05
Int'l Joint Research / Invited
-
[Presentation] 日本におけるフヴォストフ事件関係史料2016
Author(s)
東俊佑
Organizer
日露国際研究集会『コレクション形成史からみる日露関係史―ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所（IOM）所蔵アイヌ・北方関係史料の共同研究―』
Place of Presentation
北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟(W棟) 1階 W103教室
Year and Date
2016-07-10
Int'l Joint Research / Invited
